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玉乗りが得意だった私ですが年頃になると婚約を求められまして……。

 幼い頃から玉乗りが好きだった。


 親の影響で始めた玉乗り、幼い私はその魅力に取り憑かれ、毎日のように練習に励んだ。その結果、私は、この国で一位二位を争うくらいの玉乗りが上手な人になった。十歳の時には全国玉乗り大会で優勝。それからも各地の玉乗り大会で好成績を残すこととなった。


 が、年頃になると男性と婚約することを求められて。


 その結果、私は、三つ年上の美男子アルプシと婚約することとなった。


 私と彼はまったく異なる人生を歩んできた。それゆえのすれ違いもあって。でも、それでもいつかは手を取り合えるのだと、迷いなく信じていた。当然、私としても、そうなれるように努力してきたのだ。


 だが……。


「やはり君とやっていくのは無理そうだ」


 今日、彼はそんなことを言ってきた。


「よって、婚約は破棄とする」


 それから彼は私の玉乗りを全否定するような言葉を並べる。


 一切躊躇いなく。

 彼は私の人生すべてを切り捨てるようなことを口にする。


「玉乗りしか取り柄のない女なんかと関わるんじゃなかった、今はそう思っているよ。ということで、これで婚約は破棄。いいな? もう他人に戻るんだ」


 確かに私には玉乗りくらいしか取り柄がない。

 それは事実かもしれない。

 でも、面と向かってそんなことを言われたら、どうしても傷ついてしまう。


「はい……そうですね、分かりました。受け入れます。……さようなら」


 胸の傷はじんじんするけれど、私は婚約破棄を受け入れた。


 幸せになりたかったな。

 そう思うけれど。



 ◆



 その後私は実家へ戻る。


 親は事情を理解して温かく接してくれた。おかげで実家で暮らせるようになった。が、しばらくは元気を取り戻せなくて。涙が止まらないという日も少なくはなかった。食欲もあまりなく、自室にこもっている方が楽で。親の前に出ることすらできない、という時もあった。


 情けないことだが……。



 ◆



 あの婚約破棄から六年。

 私は今、玉乗り芸人として、個人で国中を回っている。


 一時は心を病みかけた私だったが、玉乗りのことを思い出して再びその道へ行くことを決めた頃から徐々に回復。玉乗りの練習に打ち込んでいるうちに段々健康な心を取り戻せるようになってきた。


 で、今ではすっかり元通り。


 元気に、楽しく、この国を代表するような玉乗り芸人として活動できている。


 そういえば、一年ほど前に国王から芸に関する賞を貰ったのだが、その直後にかなり久々にアルプシに声をかけられた。


 彼は賞を貰ったことによって発生したお金を狙っていたようで、「できればやり直してほしい」と言ってきた。


 が、既に数年関わっていないような状態だったので理解不能で。


 当然断った。

 はっきりと。


 当たり前だろう、何を今さら。


 それ以来彼とは会っていない。


 が、彼の噂を聞くことはあった。


 彼は半年ほど前に恋人と破局、それからというもの常に体調不良に襲われ続ける呪いに襲われてしまったそうだ。というのも、恋人が呪術を使う人だったそうなのだ。彼女が呪ったものと思われるそうだが、だからといって素人の彼が何か対抗できるはずもなく、彼は今も体調不良に苦しみ続けているらしい。



◆終わり◆

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