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自分勝手な彼に婚約破棄された私は意外な形で結ばれる!?

 婚約者同士になってもなお大人の関係に発展しないというのは女がお高くとまり過ぎている。


 彼の主張はこうだった。


 私の婚約者アブロフはそういう方向性にとても積極的な人で、噂によれば十歳頃にはもうそういうことを真似て異性と遊んでいたらしい。


 女友達を集めては息をするようにそういうことをしていたというのだから、正直私には理解できない。


 でもそれは事実だった。

 彼は基本的にそういう路線のことしか考えていないのだ。


 だから、大人の関係になることを拒む私を彼が愛するはずもなく。


「お前みたいなプライドだけ高い女、一番嫌いなタイプなんだよな。ってことで、婚約は破棄な」


 今日ついに切り捨てられてしまった。


 彼を嫌がっていたわけではない。まだ夫婦でないから、と、説明をして深い関係になっていなかっただけのこと。当然他の面では彼のために色々してきたし不快な思いをさせないように努力してきた。


 けれどもそれらはすべて無駄だった……。


「二度と俺の前に現れんなよ、ばーか。一生プライドと暮らせや」


 彼はどこまでも私を嫌っていた。


 アブロフとの関係を修復することは不可能。

 もはや手遅れ。

 私たちの婚約はそのまま破棄となってしまった。


「いいのよ、貴女は間違っていないわ」

「そうだゾ! 自分を大切にするのは悪いことではないんだゾ!」


 母と父はそう言って励ましてくれた。


「ワシも妻には結婚するまで長年拒まれておったゾ! でも我慢した! 妻が好きだったからだゾ! 愛している人が嫌がることをしようとは思わない、それが普通なんだゾ! そんなことで切り捨てる彼は恐らく欲望の塊ゾ! 関わっても損しかないっぽいゾ!」


 特に父は長文で励ましてくれた。



 ◆



 それから半年ほどが経った、ある日のこと。


 実家の隣に他の街から一家が引っ越してきた。

 そこにも娘がいて。


「これからよろしくお願いしますね」


 その娘というのが、私より二つだけ年上なのだが、とても美しく凛々しい女性だった。


 艶のある長い黒髪。

 この地域では見かけない色の髪だが、とても大人びていて、私はそれに釘付けになった。


「こちらこそ……! よろしくお願いします……!」


 年が近かった私と彼女はあっという間に親しくなってゆく。



 ◆



 十年後、私は、隣の家の娘である彼女と二人で新たな家に住むこととなった。


 私たちは同性でありながらも惹かれ合っている。

 共にいる時間がそれぞれにとって最も幸福な時間、その事実は決して変わらない。


 私たちはこれからも二人で生きていく。


 そうそう、そういえば、アブロフはあの後病気を貰ってしまったことで女性から毛嫌いされるようになってしまったらしく……それによって心を病み、最後には正気を失い自宅の二階から飛び降りたそうだ。


 彼にとって女性と身を重ねられない時間というのはとても耐えがたいものだったようだ。



◆終わり◆

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