可愛げがないからというだけの理由で婚約破棄を告げられました。
婚約者ボルクスに「伝えたいことがある」と言われ彼のところへ行ってみると。
「婚約、破棄するから」
さらりとそんなことを告げられてしまった。
ボルクスは真顔だった。
愛想なんて欠片もないし、遠慮や申し訳なさも欠片ほどもないようだ。
「婚約破棄……なぜですか?」
「理由はひとつ。可愛げがないから、それだけだ」
酷い理由だ。
「泣いて謝るか? まぁ許すかどうかは分からないけどな」
「それは随分勝手なのですね」
「うるさい!! ……とにかくそういうことだから。去ってくれ」
彼は完全に私を拒絶していた。
「二度と俺の前に現れるなよ」
そんな冷ややかな言葉と共に私たち二人の関係は完全に終わってしまった。
その日の空は切なくなるくらい晴れていて。
帰り道、空を見上げて眩しさを感じ、静かに目を細めた。
これからどうなるかは分からないけれど、でも、取り敢えず今は彼のもとから去ろうと思う。
可愛げがない。
ボルクスに言われた言葉が胸の内をぐるぐるする。
いや、確かに、私はわりと地味なタイプだ。愛くるしい女性かというとそうではないかもしれない。ぶりっこのようなこともできないタイプだし。ただ、それでも、それなりにきっちりとは接していたはず。不快な思いはさせていないはずなのだが。
ま、気にしても無駄か。
彼との関係は終わった。
先を見る方が良いかもしれない。
◆
数年後、私はボルクスではない男性と結婚した。
彼は私より五つ年上だ。
最初はまた「可愛げがない」と言われるかと心配していたが、いざ関わると案外そんなこともなく。
むしろ彼は私を可愛がってくれている。
アクセサリー作りという共通の趣味があったこともあって、私たちは今でも仲良し。
きっとこれからも……私と彼なら仲良しでいられると思う。
ちなみにボルクスはというと、私との婚約を破棄した直後に他の女性と結婚したそうだ。だが、結婚後も数人の女性と大人の関係になることを続けていたらしくて。ただ何とか上手く隠せていたようだ。けれども、ある時、病気を貰ってしまって。それによって浮気が発覚。
大問題となる。
その後ボルクスは妻の父親にしばきまわされたそうだ。
◆終わり◆