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ちょっとした用事で婚約者の彼のところへ言ったのですが――見てしまいまして。

 重なる唇、絡み合う四肢、重なりしとやかな音をこぼす肉体――それらはすべて目の前のベッドの上にある。


 私はそれを即座に写真に収めた。

 我が剣とするために。


「これは一体……?」


 ちなみにここは私の婚約者であるブルビーヌスの自室。

 私は、一週間ほど前の旅行の写真を渡そうと思って、彼の家へやって来た。


 そして目撃してしまったのだ――彼が知らない女性と濃厚に関わり合う様を。


「な、なぜお前が!? どうして!?」

「私はただこの前の写真を持ってきただけですけど……あの、もしかして、タイミングが悪かったですか?」


 他の女性と深く艶やかに接している時に来てしまうなんて。

 自分でも、やらかしたな、と思った。


 知らなければ何も言わずに済んだ。けれどもその事実を知ってしまったなら、無視することはできない。立場上、見なかったことにしてあげることも難しい。


「では……邪魔者は消えますね。ブルビーヌスさん、誠実でない貴方との婚約は破棄です。……さようなら」


 彼は大慌てで何か言おうとしていたけれど、私はもう振り返らなかった。


 だってそうだろう?

 彼は許されないことをしたのだ。


 それが明らかになってしまった以上、今まで通りの関係ではいられない。


 ……でも、良かったのかもしれない。


 あのまま気づかずにいたら、私は間違いなく、何の迷いもなく彼と結ばれていただろう。彼が何か言ってこない限り、彼を信じて、当たり前のように結婚していたと思う。わざわざ調べたりはしなかったはずだ。


 そんな状態で密かに関わりを持たれているくらいなら――こうしてすべてが粉砕されることになる方がずっとまし――いや、むしろ、この結末の方が良い。


 その後、私は手続きを開始した。


 そう――誠実であれなかったブルビーヌスとの婚約を破棄するという手続きを。



 ◆



「ままぁ! これ食べたい!」

「それ、昨日も食べてなかった?」


 ブルビーヌスとの婚約を破棄した日から数年。

 私は今、一児の母となっている。


 他の女性と過剰な関わりを持っていたブルビーヌスと別れた数か月後、私は、趣味関係で行きつけにしていた店で一人の青年と知り合った。


 彼とは共通の趣味があって話が弾む。

 色々話しているうちに親しくなり、結婚した。


 その後、子にも恵まれて。


 で、今がある。


「うん! でも今日も食べたいんだぁ! だって美味しかったしぃ!」

「もう。まったく。……ちょっとだけよ?」

「わあぁぁぁぁぁぁーい!!」

「ちょっと、そんな大声出さないの。近所迷惑でしょ」


 これからも彼や愛しい子と生きていきたい。

 きっとそれが幸せへの道だと思う。


 ちなみにブルビーヌスはというと、あの後、あの時関わっていた女性と結婚しようと考えたそうだが――彼が女性から病気を貰ってしまっていたということがきっかけとなって両家が大揉めすることになり、結局結婚はできなかったそうだ。



◆終わり◆

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