婚約破棄され、絶望に染まり……。
「君のような女性と婚約するべきではなかった。今はそう思うよ」
人の心というのは思っているより脆いものだ。
特に人生において重要なことが絡んでいると。
心は自分でも驚くほどにあっという間に崩れ壊れてゆく。
涙が出る、なんて、そんな単純なものではない。
「よって、君との婚約は破棄とする」
この感情をどう表現すれば良いのかなんて分からず。
しかし確かに感じる。
上手く表現できないような、白の上で絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜたような、そんな感情を。
見つめていた未来が。
信じていた明日が。
突如、叩き壊されたら。
人というのはよく分からない感情の色を目にすることとなる。
「はっ。オレもバカだったよ、君なんかを選んで。もっと見る目を鍛えておくべきだったな」
彼がそんなことを言うのを……どこかひとごとのように聞いていた。
◆
婚約破棄され死を選んだ私は、宇宙を駆ける隕石に生まれ変わった。
煌めく宇宙。
きっと生涯見ることはないと思っていた光景。
……とてもきれい。
そう思った。
ぼんやりと美しい光景を見ながら、人々が暮らすあの星へと突き進んでゆく。
星に突入する直前爆発して体が複数になる。
でも宙を駆けることはできる。
なぜなら私はもう人間ではないから。
複数に別れた私、隕石は、人々が暮らす地上へと落ちてゆく。
◆
そして人類は終わった。
かつて婚約者だった彼の生もきっと終わっただろう。
これは復讐なのか?
それすら分からないけれど。
でも、今は、少しだけすっとしている。
こんな風に爽やかな気持ちでいるのはいつ以来だろう。
◆終わり◆




