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婚約破棄された私が不幸になると思いました? だとしたらそれは間違いです。捨てられたからといって皆が不幸になるわけではないのです。

 美しい青の空。

 そこに浮かぶ夢のような白色の雲。


 世界は今日も美しい。


 でも、私は、穏やかではいられない。


「貴様との婚約を破棄する!」


 婚約者ムルルに彼の屋敷へ呼び出されたと思ったら、そんなことを告げられた。


 一応「なぜですか?」と尋ねてみると。


「貴様の顔立ちが好みと少しだけずれているからだ!」


 はっきりとそう言われてしまった。


 少しだけずれている? それはどういう意味? 大嫌いではないけれど一番好きな顔立ちではない、ということか。でも、それが理由なら、婚約する前に分かったのではないのか? 私は最初からこの顔をしていたのだから。妥協して私を選んだけれど我慢できなくなった、ということだろうか?


 いずれにせよ、何とも言えない複雑な気持ちにならずにはいられない。


「そうですか、残念です」

「貴様がどう思うかなんてどうでもいいことだ」

「酷いです……」

「黙れ女、そして、速やかにここから去れ」


 ムルルは高圧的だった。


「それでは。これにて失礼いたします」


 この日はそれで彼の屋敷から去った。


「婚約破棄だなんて可哀想にね……」

「あの娘は何も悪くないのに……」

「気の毒ね、彼女。ムルル様の気まぐれに巻き込まれるなんて」


 屋敷の侍女たちは私のことを気の毒に思ってくれていたようだった。


 少し救われた。



 ◆



 そうして独り身になってしまった私だったが、母方の伯父の紹介で舞踏会に参加したことでこの国の王子パルオアルと知り合うことができた。


 そして彼との結婚が決まる。


「まさかこんなことになるなんて」

「ごめん。でも、ぼく、君じゃないと嫌なんだ。わがままでごめんだけど……」


 少ししゅんとするパルオアルを見て慌てる。


「い、いえ! そういう意味では!」

「そう?」

「はい。貴方と出会えたことは何より嬉しいことです。あの日、舞踏会で、声をかけてくださってありがとうございました」


 王子を傷つけたくない。

 善良な彼に悲しい思いや辛い思いはさせたくない。


「これから、よろしくお願いします」

「こちらこそ」



 ◆



 あれから十年。

 私とパルオアルは国王夫婦となった。


 思ったより早くこの時が来てしまった。


 でも大丈夫。

 彼とならきっと上手くやっていける。


 そう信じている。


「これからきっともっと忙しくなる……それでも一緒に来てくれるかな」

「もちろん」

「ありがとう……!」

「これからも妻として貴方の力になるわ」


 私たちには明るい未来がある。



 ◆



 一方ムルルはというと。


 私を切り捨てた翌日に酒を飲み過ぎて母親の貴重品を売ってしまったらしく、それによって勘当を言い渡されてしまったらしい。


 その後の彼は家を出る時に持っていたお金で毎日のように酒を大量に飲むような暮らしを続けていたそうだが、次第に金も尽き、やがてほぼ一文無しの状態となってしまって。


 その後は超低賃金な職で少しだけのお金を稼ぎ、家は持たず服も一着だけで、かなりぎりぎりの生活をしていたそうだ。


 しかし、そんなある晩、路上で寝ていたところ通行人に冗談半分で襲撃されて。


 数時間にわたって殴られたり蹴られたりしてしまい、その場で亡くなってしまったらしい。



◆終わり◆

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