忘れた頃にやって来るのは災害だけじゃないのよ。~でもこの婚約破棄は最高のものだったわ~
災害は忘れた頃にやってくるって言うじゃない?
それは事実よね。
案外本当にそういうものよ。
気の緩みが大敵、って感じ。
でも、忘れたころにやって来るのは、災害だけではないの。
「君との婚約だけど、破棄とすることに決めたから」
婚約者の彼――フェブリンズはまったく想像していなかったタイミングでそんなことを言ってきたわ。
驚きよね。
いきなり過ぎるわ。
でも本当のところを言うなら、私は「彼と結ばれたい」とは思っていなかったの。とはいえ今さら婚約から逃れることなんてできないのよ。だってそんなことをしたら罰を与えられるじゃない。
約束を破った、て。
だから、彼の方から婚約破棄を言ってくれたことは、私にとってとても好都合なことだったの。
「そうですか……分かりました。残念ですが貴方がそれを望むなら受け入れます。フェブリンズさん……さようなら」
こうして私たちの繋がりは切れることとなった。
ある意味ラッキーとも言えるわね。
◆
あれから数年が経ったわ。
私は今、心から愛しいと思える人と結婚し、一つの家庭の妻として生きているの。
もちろん良いことばかりじゃない――人生だもの。
でも逆に悪いことばかりでもないわ。
これからもきっと色々あるでしょう。
それでも私は彼と共に生きていく、そう誓えるわ。
そういえば、フェブリンズはあの後恋人にかっこつけるために登山に挑戦して遭難、亡くなったそうよ。
無理はするものじゃないわね。
◆終わり◆