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婚約破棄された瞬間彼は終わります。
その日私は眠っている時に不思議な声を聞いた。
『貴女はもうすぐ婚約破棄されます。しかし安心してください。婚約破棄された瞬間彼は終わります』
知らない女性の声だった。
でもただの夢とも思えず。
不思議さを強く感じていた。
◆
数日後。
「あのな、おれ、決めたんだ。おめぇとの婚約、破棄するんだ」
婚約者の彼がそう言った瞬間、窓の外で雷鳴が響く。
何事かと思っていると。
急に窓ガラスが割れて粉々になって。
見たこともない大きな鷲のような生物が入ってきた。
「ぎゃっ!」
彼はその鷲のような生物にくちばしで眉間を貫かれ、その場で倒れた。
怖くなった私は逃げようとしたのだけれど、鷲のような生物はこちらには手を出さず。
こちらを一瞥しただけで、どこかへ飛び去っていった。
何が起きたのか理解できなかった。
◆
あれから八年、私は美形かつちょっぴり天然で可愛らしい夫と二人の子に恵まれ、日々忙しくも楽しく生活できている。
あの日の鷲のような生物はあれ以来一度も現れていない。
◆終わり◆




