婚約破棄された……けど!? ~意外な結末が待っていました~
そこそこお金のある家、理解ある両親、恵まれた環境でのびのびと育ってきた私……なのだけど。
今、まさかの危機に出会ってしまっている。
「君との関係を解消する」
そう。
今まさに。
「婚約は破棄だ!!」
婚約者モルスとの終わりが見えてしまった瞬間なのだ。
前兆はなかった。
喧嘩になったというわけでもない。
でもこんなことになってしまっている。
「あの……え、その、少しお待ちください。それは一体どういうことで……」
「は? どういうことも何もない。婚約は破棄とする、それだけのことだ」
きっぱりと返してくるモルス。
どうやらそういうことらしい。
彼の心は決まっているみたいだ。
もはや手遅れか……。
「……分かりました」
「ようやく分かったのか?」
「はい」
素直に言ってみたのだけれど。
「遅いな」
さらに攻撃を食らってしまった。
「すみません……」
謝ったのに遅いと言われるとは。
悲しい。
「いやいい。ではな、さらば」
「あ、はい。さようなら」
こうして終わるモルスとの関係。
私は結局何もできなかった。
できたのは婚約破棄されるのを受け入れることだけだった。
その後私は一旦実家へ戻った。
それしかできることがなかったのだ。
「そういうことならまたここにいればいいわよ。結婚なんて焦ることもないし、家にいればいいわ」
「また賑やかで楽しくなるな! はっはっはは!」
両親は温かく迎え入れてくれた。
◆
それから数週間が経ったある日のこと、私が住む地域とは少し離れたところにある街にて規模の大きな地震があった。
私はボランティアとして被災地に入ることになる。
そこで一人の男性を助けた。
歩いている時に偶然見つけた倒れていた彼を看病したのである。
その彼は実は王子で。
「助けてくれてありがとう。どうか、お礼させてほしい。よければ城へ来てくれないかい」
意外な形で、生まれて始めて王城へ行くこととなった。
◆
それから二年半、私は王子の妻となった。
「まさか王子の妻になるなんてね。驚いたわ」
「驚き過ぎて腰が痛いな! はっはっはは!」
両親は驚きながらも受け入れてくれた。
そして私は一人王城へ移り住む。
親とは離れることになってしまった。
でも彼がいるから問題ない。
彼がいればきっと大丈夫、そう思える。
ちなみにモルスは、気になる女性が働いていたとある酒場にて酔っ払って服を脱ごうとする行為を繰り返し、迷惑行為として治安維持組織に通報され、牢に入れられたらしい。
情けないなぁ……。
◆終わり◆




