なぜかいつも婚約破棄された直後に婚約者が消えます。~同じようなことが三回も続いていて不思議です~
なぜかいつも婚約破棄された直後に婚約者が消える。
こんなことになっているのは私だけのようだ。
しかし何が起こっているのかは不明のまま。
そう、あれは、前の前の人生の時から始まった――。
◆
「かれ、あたしのものになったからぁ」
あれは前の前の人生の時。
婚約者を他の女に寝取られた。
「すまないな、婚約は破棄させてもらう」
婚約者の彼がベッドで女性と触れ合いながらそう告げた直後、それは起こった。
半裸だった彼の全身が白い光に包み込まれて。
数十秒煌めいた後に彼は消えた。
「ちょっとあんた! あたしのかれになにしたのよぉ!」
「いやいや、そんなこと言われましても。何がどうなっているのかなんて知りませんよ」
「はぁ? あんたのしわざでしょ!?」
「こちらが聞きたいですよ」
その日以降、彼は目撃されなくなった。
大規模な捜索活動が行われたが数カ月見つからず、捜索活動はやがて打ち切りとなった。
◆
その次、今から考えると前回、その人生でも同じようなことが起きた。
「お前の顔面臭そうでやばい」
「酷いですね……臭くないですよ……」
「から、婚約は破棄するわ」
刹那。
彼の身体に白っぽい炎のようなものが揺らめき始める。
「あっ! あっ! えええ!? なんじゃこりゃ!? あわっ! あわわ! わわわわわ!? てめぇ何しやがった!?」
前の人生の記憶を持っていた私は「またこれか……」と内心思う。
だが原因など知らない。
だからどうしようもない。
「ぎゃあああああ!!」
やがて彼はその白っぽい炎のようなものに包まれてゆき、やがて消滅した。
骨どころか灰さえも残らなかった。
この時は、彼の親が子に興味のない人だったということもあって、謎の突然の死ということで話は片付いた。
◆
そして今回。
私はもうすぐ婚約破棄されそうだ。
「アンタンのことは好きにナレナイのヨ、だから、ネ、ここで去ってほしいのヨ。今日は、ネ、それを伝えたくて呼んだのヨ」
そろそろ、だろうか。
「というコトデ、ネ、アンタンとの婚約は破棄す――いやあああああ!!」
突如天井から降り注ぐ大量の白いムカデ。
それらは私のところへは来ない。
すべて彼に向かっていっていた。
「嫌あああ! 嫌ヨおぉぉぉぉぉぉ! 助けってええええええ!!」
今回はこういうパターンか。
「ちょっとアンタン何したのよぉぉぉぉ! 召喚とかやめなさいよぉぉぉぉぉ! 酷いわぁぁぁぁぁ! ァァァァァァ!!」
数秒後、婚約者の彼は塵となって消え去った。
その場にぽつんと取り残される私。
「ああ、また、こういうことになった……」
一人寂しく呟いて。
苦笑する。
毎回婚約破棄される、それだけでもおかしな話だけれど。それだけではなく、毎回破棄を告げた婚約者がその場で消えてゆくのだから、これまた不思議な話だ。
◆
あれから十五年。
あの謎の現象は結局正体不明のままだ。
だが私はついに誰かと結ばれることができた。
結婚した相手は有力貴族の子息。
おかげで色々な面で困らずに生きることができている。
今はこの人生に満足している。
◆終わり◆
 




