大事に育てられわがままに育った妹は好きな人と婚約するも婚約破棄されることとなってしまったようです。~そして私は新たな人生を~
私には三つ年下の妹がいる。
彼女はまるでお人形さんのよう。整っていて華やかな面を生まれ持ち、まとう空気も花園のようであり、可愛らしいフリルがたくさんついたドレスもよく似合う。
一方私は平均的な容姿で若干鋭めの目つき。選んで着る服も可愛らしいものというよりかは中性的なものを好んでいた。
そのため周囲はいつも私より妹を愛した。
そもそも両親がそうだった。二人はいつも妹のことばかりを愛し、私には最低限の手しか加えず。放置されるよりかは良い、とはいえ、姉妹なのに待遇が違い過ぎた。
で、わがままに育った妹は、いつしか私を虐めることを娯楽とするようになっていった。
いろんな嫌がらせをされた。
事実でない恥ずかしい話を広められたり、お茶に下剤を混入させられたり、気持ち悪い姿の虫を大量に渡されたり……。
だが先日そんな妹の婚約が決まった。
彼女は見たことがないくらい浮かれていた。
よほど婚約が嬉しかったのだろう。
今にも天に昇ってしまいそうなほど喜び、歌い踊っていた。
親から聞いた話によれば、婚約の相手は妹がずっと好きだった男性らしい。
それは嬉しいだろう。
理解できないことはない。
ずっと想っていた人と結ばれる。
そんな嬉しいことはない。
だがそれから一カ月半ほどで妹は泣きながら帰ってきた。
「破棄されるなんてええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
妹は冷静さを欠いていた。
いや、もはや正気も失っているような状態であった。
両親の目の前で号泣しながら暴れていた。
椅子を蹴り飛ばしてさらに上から踏み潰して壊し、壊れた椅子を両手で掴んで窓にぶち当て窓ガラスを割って、そこから涙混じりの奇声を発し外へ響かせる。
その後事情を聞いたのだが。
浮気されていたことが発覚して妹がそれを責めたところわがまま過ぎるとして婚約破棄を告げられたそうだ。
浮気しておいて婚約破棄というのはどうかとも思うが……。
ただ、これまで悪事を繰り返してきた妹だけに、同情はできなかった。
それからも妹は毎日のように自宅内で暴れていた。落ち着かせようとした父親が殴られる、というようなことも、数日に一回はあった。母親などは怯えきってしまいもはや制止しようとすることさえできない。また、割ってできたガラスの破片を手に妹が親に危害を加えようとすることもよくあった。
私はこっそり家を出た。
確かにあそこは生まれ育った家だ。しかし、正直あそこに良い思い出はあまりない。嫌がらせを受けてきたこと、冷遇されたこと、そんな思い出がほとんど。楽しかった記憶は家にはほとんどない。
だから家を出ることに躊躇いはなかった。
私は新しい世界へ行きたい。
あの巣箱から飛び立って。
◆
それから数年、王都で宿泊施設の掃除婦として働いていた私は、たまたま宿泊しにやって来たとある領主に見初められ結婚した。
今は彼の家である赤い屋根の屋敷に住み、領主の妻として生きている。
いつもくだらないギャグで笑わせてくれる、そんな彼を心の底から深く強く愛している。
◆終わり◆




