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やっかいな親のもとに生まれたうえ婚約破棄されてどうしようもなくなっていた私は、魔法使いのおばさんに拾われました。

 私の親はやっかいな人たちだった。


 とにかくいちいち感情的になる。しかも小さなことでも気に食わないとすぐに怒り出す。相手の事情を想像することなど一切せず、感情のままに振る舞う。子ども相手だと特に酷い。


 そんな親のもとで育った私は、母親が決めた相手と婚約した。


 そこで上手くやれ。

 そうすればうちにも大金が入るから。


 そんなことを言われ家から出された時には言葉を失った。


 とはいえ家を出られるならそれにこしたことはなく、これはこれで順調にいっていると考えていたのだけれど。


「君との婚約だが、破棄させてもらうことにした」


 今朝、突如関係の終わりを告げられてしまった。


 なぜ? そう尋ねてみても彼は答えてはくれず。私は荷物をまとめて彼の前から去るしかなかった。


 で、今に至っている。


 このまま歩いて家へ帰ればきっとまた親に色々言われるだろうな……、と思うだけで、心の中が黒いもやに染まってしまう。


 身体が重い。

 責められる未来が見える。


 そんな時。


「そこのお嬢ちゃん! 暗い顔をしているね!」

「え」


 声をかけてきたのは五十代か六十代に見えるやや小太りの女性だった。


 落とし物でもしていただろうか。

 そんなことを思っていると。


「何か嫌なことでもあるのかい?」

「あ……いえ」

「うそだね! 嫌なことがあるのがまるばれだよ」

「……実は」


 こんなところで個人的なことを話すのも問題かと思ったけれど、でも、自然と話し始めてしまっていた。


 それがおばさんとの出会いであった。



 ◆



 あれから数週間が経ったが、驚いたことに、今もあの時出会ったおばさんのところで生活している。


 あのおばさんは魔法使いだった。で、弟子候補が欲しかったそうで。そんな時たまたま歩いていた私に声をかけたとのことだ。それゆえ人一人を受け入れる準備はできていて、私はその枠に収まることができた。


 今は見習い魔法使いとなっている。


「あの木の実摘んできたよ。一緒に食べないかい?」

「いいですね」


 とはいえ厳しい修行をさせられているわけでもなく。

 色々世話してもらっている。

 もう情けなくて泣きそうなくらい、お世話になってばかりだ。


「ああべつに敬語じゃなくてもいいよ」

「いやいや、それは駄目ですよ」

「いいっていいって。固いねぇ。ま、そういうところも嫌いじゃないんだけどねぇ」


 ちなみに、両親は、先日魔法使いのおばさんによって異世界箱に監禁された。


 今は異世界箱の中で相応しい罰を受けているはずだ。


 もうこの世で会うことはない。

 私にとっては何よりもの救いだ。


 二人がいなければもう……当り散らされることもない。


 これは最高の結末。

 ハッピーエンドそのものだ。



◆終わり◆

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