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いきなり婚約破棄を告げられました。~一人娘とされている私には実は妹がおりまして~

「お前、可愛い見た目してるから良さそうに思えたけど、実際は外れだったわ。てことで、婚約は破棄な」


 その日、私は、いきなりそんなことを告げられてしまった。


「あーあ。ビジュアルで決めるんじゃなかったわー。お前がこんな外れとはな。驚きだわ。というか、お前と婚約してたことがあるとか、人生の汚点になりそうだわ。あー後悔後悔。後悔する前に外れって気づけりゃ良かったのになー、あーあー」


 婚約した頃、彼エルビスは優しかった。

 いつも眩しいくらいの笑みを向けてくれて。

 そんな彼が好きだった。


 でもそんな彼は消えてしまった。


 彼はもう私に笑みを向けはしない。


「あーもうお前の顔見るだけで落ち込むわ。てことなんで、視界から消えてくれな? ばーいばい」


 こうして私はもう彼の前に姿をさらせなくなってしまった。


 楽しかった日々は確かにあった。

 でもその思い出さえも今は幻のように感じられて。


 私は幻の中にいたのではないか?


 そう思ってしまうほどに。


 楽しく満ちた日々は終わりを迎えた。

 あの日々はもう戻らない。


 私は実家へ戻る。


 婚約破棄を告げられ帰宅した私を迎えてくれたのは赤髪の妹だった。


「そんなことが……」


 彼女はこの世にいないことになっている。

 表向きには。

 我が家の娘は私は一人ということになっているのだ。


 だが彼女は存在している。


 ……ただし、普通の娘でしかない私とは異なり暗殺者なのだけれど。


「お姉さまを捨てるなんて……信じられないわ。こんなに優しい女性滅多にいないのに」

「ありがとう、その言葉に救われる」

「わたし、エルビスさんのこと、許せないわ。お姉さまを傷つけて笑っていられるなんて、許せるわけがない。それに……そんなことが許されるなら、この世自体がおかしいわ」


 婚約破棄に一番怒ってくれたのは妹だった。


 妹はとても優しい娘だ。仕事は黒いものだけれど、根は黒くない。存在を消されてもなお、いつも私を大切にしてくれる。一人娘として生きていける私を恨みもしない。


 その後、エルビスは、妹の手で葬られた。


 また、彼女の魔法によって、私たち以外のすべての人間の脳ならエルビスに関する記憶が消え去った。


 つまり。

 彼は二度死んだのだ。


 それから数年が経ち、私は商売で大成功し富を築いた家の一人息子と結婚。以降は、夫の仕事をたまに手伝いながら、家事に打ち込んでいる。


 日々忙しくはあるが、同時に充実してもいる。


 ちなみに、いないことになっている妹とも、たまには会っている。



◆終わり◆

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