もう愛なんて求めない! ~婚約破棄された令嬢は女友達と楽しく暮らす~
良家の娘としてのびのび育ったエライカは齢十八で親戚に紹介された五つ年上の青年アッポと婚約。
だがいつしか不穏な空気になってきて……。
「エライカ! お前とはもうやっていけん! 婚約なんぞ破棄だ!!」
その日、アッポは躊躇うことなく婚約破棄を告げた。
きょとんとするエライカ。
だが彼女はすぐに言われていることを理解する。
「私のことが嫌になったということですね」
「ああそうだ! ったく、お前みたいなマイペースな女と関わるべきではなかった。今はとても後悔している! お前みたいな女と婚約していた、というだけでも、一生恥ずかしい思いをするわ。最低だ」
こうして一方的に切り落とされたエライカだったが、彼女はあまり動じていなかった。
婚約破棄されても深く傷つきはせず。
まぁいいか、くらいにしか考えず。
ただ、『もう愛は求めない』という決意だけを、しっかり胸に刻んでいた。
実家へ戻ったエライカは昔からの友人のすすめで町の喫茶店に通うようになる。
「でねー! 面白かったのー!」
「ふふ、そうなのね」
「聞いてくれる? すっごーく笑えてー」
「聞かせて聞かせて」
エライカは毎日のように友達と喫茶店で過ごす。
◆
あれから数年が経ったが、エライカは今も、女友達と喫茶店でティータイムを楽しんでいる。
たまには家の庭で語らうことも。
形は様々だが、今のエライカは、同性と遊ぶことを重視しているのだ。
だがエライカは後悔していない。
むしろ、女友達と楽しく過ごすことを何よりも欲している。
最近の彼女はいつも笑顔。快晴の空のような晴れやかな表情で、明るく華やかに、彼女なりのペースで楽しく暮らしている。見るからに幸せそうだ。
一方アッポはというと、思い立って事業を始めるも失敗。その際に多額の借金を背負うこととなってしまった。しばらくは日雇いの仕事で稼いで借金を返済していたのだが、ある時怪我をして肉体労働はできなくなって。それによって借金返済が滞り、最終的には内臓を売らされてしまった。
◆終わり◆