259/1194
婚約破棄されこの世から旅立つ。
「きみとの婚約は本日をもって破棄とする!」
響く婚約者オーエヤンの声が私の中の正常さを壊した。
「そもそもきみのことは好きじゃなかったんだ、ださいし麗しくないし奉仕もしないし。だからいずれはこうなっただろうな」
私はその場から走り去る。
瞳には涙が。
感情的になることをやめられない。
見慣れた景色さえ、今は心を痛める一つにしかならない……。
その日、私は、雑な書き置きを遺して森にて命を絶った。
◆
娘を失い、亡骸の近くにある書き置きから事情を知った母親は、オーエヤンを自宅から誘拐。かつての娘の部屋に閉じ込め、拷問と言っても離れてはいないようなことをした。
「酷いよぉ……もうやめてよぉ……」
「無理よ」
「誰かぁ……ママぁ……助けてよぉ……」
十年が経った今も、オーエヤンは、誰にも知られぬまま罰を与えられ続けている。
◆終わり◆




