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地味系女子だった私はずっと妹に虐げられてきましたが、選ばれたのは私でした。

 これまでずっと華やかな妹マリーに虐げられてきた。


 私と妹、この姉妹は、タイプが少々異なっている。私は比較的地味なタイプで、妹は華やかで目立つタイプ。そういうこともあってか、私はいつも損な役回りだった。


 過去婚約者がいたこともあった。

 しかし大抵妹に壊された。


「お前がそんな酷い女だったなんてな……婚約は破棄するわ」


 妹が吹き込んだ嘘を信じた婚約者からそんな風に切り捨てられた時には絶望しかなかった。


 彼女に嫌がらせをされたり虐められたりすることには慣れていても、婚約者まで巻き込んでということにはなれていなかったので、当時その件に関してはかなりショックだった。


 もうすべて諦めたからどうでもいいけれど……。


 そんな私と妹が、今日、王城にて開催される晩餐会に参加することになった。


 妹と一緒に行かなくてはならないなんて。

 絶対またややこしいことに巻き込まれそう。


 正直行く前から憂鬱だ。


 しかし、だからといって参加を拒否することなどできず。


「行きましょ! お姉さまっ」

「そ、そうね……」

「んもーお姉さまったら暗いんだからっ。そんなじゃモテないわよ!」


 珍しく私の前でもご機嫌な妹と共に会場へ向かう。


「王子様も参加されるそうよ、おめかししちゃった!」

「そうね」

「お姉さまは相変わらず地味ね!」

「ええ」

「いいわ、引き立て役としては最高の出来よっ」


 私は何も期待しない。

 だからこれでいい。

 誰からも愛されないとしても、それでも構わない。


 私はただ平穏に暮らしたいだけ。



 ◆



「貴女に惚れてしまった、話がしたい」


 何がどうなった?


 目の前にはアクリル王子。

 丁寧にお辞儀をされている。


 おかしい。おかしいのだ、私がこんなことを言われるなんて。だって私はただの地味な女でしかない。実質妹の引き立て役でしかないというのに。


 これでは引き立て役とは言えない。


「あの……私ではなく、妹の方が可愛いので……」

「違う。わたしが話をしたいのは貴女だ。他の誰でもない」


 途中までは妹がアクリル王子と喋っていた。

 私は傍らでそれを見ていただけ。

 空気のようにそこにいただけで、もちろん、特に何も発していない。


「あ、アクリル様! そんな女より! あたしの方が……」


 妹マリーがおろおろしながら口を挟むと。


「今は君に話していない」


 アクリル王子はマリーを睨んだ。


「わたしは貴女のことを知りたい」

「は……はい、えっと……」

「構わないだろうか」

「……はい」

「良かった。ではこちらへ。案内しよう」


 私は流れのままにアクリル王子に誘われる。


 歩き出す瞬間恐る恐るマリーを見ると、彼女は鼻水を垂らしながら泣いていた。


「妹さんほぼ無視されて可哀想にねぇ、くすくす」

「情けないわね」

「自分の方が可愛いーとか思っていたんでしょうね、ふふ、お姉さんよりずっと馬鹿っぽい面のくせにねえ」

「きっと今まで馬鹿な男としか縁がなかったのね」


 相手が善良な者であれば気の毒に思っただろうが……この時は相手が相手なのでそうは思わなかった。


 これまで痛めつけられてきたのはこちらだ。

 彼女は私を傷つけてきた。

 一度そういう目に遭ってみればいい、そうすれば少しは痛めつけられる側の気持ちが分かるかもしれない。


 その後私はアクリル王子と結婚した。



◆終わり◆


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