珍しい青い髪を持って生まれた令嬢は婚約破棄されてから新たな道を行くことを選ぶ。
アンネ・レディーグレイは美しい海のような青い髪を持って生まれた。
彼女は十八になってすぐ親が決めた三つ年上の男性オーグと婚約した。
しかし婚約者から愛されることはなく。
むしろ冷遇されていた。
「何なの? あなたのその髪、変な色ね」
「にーさんの婚約者がそんな変な髪だなんてがっかりだわ~」
オーグの母と妹からはいつもそんなことを言われた。
で、当人であるオーグ自身も。
「君の髪色のせいで恥ばっかりかかなくちゃならない地獄だよ」
アンネを愛することはなく、それどころか、彼女の髪色のことをいつもそんな風に言った。
だが彼女は卑屈にはなっていなかった。
なぜなら精霊という友がいたから。
幼い頃から精霊と関わる力を持っていたアンネにとって、人々からの評価など小さなものであった。
そんな彼女は、ある日、オーグから告げられる。
「君との婚約を破棄する」
宣言した彼の後ろには彼の母と妹もいた。
「あなたみたいな怪しい女を我が家に入れるのは無理よ」
「ほんとそれ~、友達からも色々言われて不快だし~」
女性二人は相変わらずであった。
こうして婚約者から切り捨てられたアンネ。
彼女は実家へは戻らなかった。
精霊の導きのもと、新たなる道へ進むことを決めたのだ。
◆
アンネは実家とは縁を切り、冒険者として生きる道を選んだ。
彼女には腕力はないし武器を扱う能力もない。ただ、他の冒険者たちにはない、精霊と意志疎通し協力するという才能があった。彼女はそれを活かして冒険者として活躍し始める。そうして彼女はあっという間に優秀な冒険者となっていった。
その優秀さは、国王からの表彰も数回受けたほど。
冒険者として活動し始めてからの彼女は輝いていた。
◆
それから数年。
アンネは王子に見初められて結婚した。
国王から表彰を受けていた時に王子に惚れられたのであった。
最初は乗り気でなかったアンネだったが、王子も昔一時期冒険者として活動していたことが明らかになってからは心通じ合うようになっていって。いつしか二人の心か通い合うようになっていったのだった。
アンネは今、王城にて、夫である王子と共に幸せに暮らしている。
ちなみに、オーグとその母妹はというと、あの後アンネの精霊の力によって痛い目に遭わされた。
オーグは火を司る精霊によってある日突然自然発火。周囲にいた人が消火しようと努力したがなかなか上手くいかず、何とか消火できた時には彼は既に息絶えていた。手遅れだった。
母は、いたずら精霊によって不倫をばらされ、社会的に死亡した。
妹は、母の不倫発覚騒ぎによって誹謗中傷されたことと世間体を気にした婚約者から婚約破棄されたことで心を病んでしまい、ある時急に自ら命を絶った。
もちろん、アンネの指示ではない。
これらはアンネを大切に思う精霊たちが勝手に行ったことである。
◆終わり◆




