表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/1194

先の長くない命と言われたので婚約破棄されるものと思っていたのですが……。

 夕暮れ時、私は、担当の医師から「先の長くない命だ」と告げられた。


 私は一番に婚約者オーガニック・コットンにそのことを連絡した。

 最も迷惑をかけるのは彼だろうと思ったからである。


 その日はもう夜が近づいていたので眠った。


 翌日、オーガニックが病室へやって来た。


「話は聞いたよ。そんなに状態が悪いのかい?」

「はい、実は。……申し訳ありません」


 本当のことを告げてしまった。きっともう関係は続いていかないだろう。ここで終わってしまうだろう、婚約破棄を告げられてしまうに違いない。


 だが。


「そうか。なら、最期まで、共に在ろう」


 オーガニックは婚約破棄は口にしなかった。


「だが私は諦めない!」

「え」

「君を救う道を探す!!」

「ええ……」


 彼は前向きだった。

 この状況でも明るい未来を見据えているようであった。


「道はあるはずだ」

「そうでしょうか……」

「諦めるな! 最期まで! 死に抗うんだ!」


 今日の彼はやたらと熱血系である。


「……婚約破棄しないでくださってありがとうございます」

「何だって? するわけないだろう」

「本当にありがとうございます。……救いです」


 死が近い私を切り捨てなかった彼には感謝の気持ちしかない。


 とはいえこの死に抗える気もせず。

 きっと告げられた言葉の通り終わりへ近づいていくと思う。


 でも、それでも、彼が近くにいてくれるなら悲しくはない。


 たとえ長く生きられなくても。


 たとえ子を持てなくても。


 たとえこのまま終焉へ向かうだけだとしても。


 それでも救いはある。

 彼が傍にいてくれる限り。


「共に頑張ろう! 私も頑張るから!」

「あ、ありがとうございます……」



 ◆



 あれから五年。

 驚いたことに、私は今も生きている。


 死を告げられて以降世界中の医師や薬屋と連絡を取るようになったオーガニックが万病を治すという高額な薬を買ってきて、私は恐る恐るそれを摂取した。すると驚いたことに身体の調子が良くなって。悪かった身体の状態は急激に改善し始めたのだ。


 そして生き延びることができた。


「今日が何の日か覚えているか?」

「……夫婦になった日」

「そう! 正解! よく覚えてくれていたな」


 回復した私は予定通り婚約者であったオーガニックと結婚し、今でも夫婦として彼と生きている。


「あぁ、君が助かって良かった。結婚してくれてありがとう」

「こちらこそ……あの薬を貰えて、助けてもらえて、本当に良かったわ」


 私たちは幸せに生きてゆく。


 どんな困難も、どんな山や谷も、彼とならば恐ろしくはない。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ