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婚約破棄を告げられたその日に見初められました。~色々ありすぎて脳がパンクしそうですが、取り敢えず流れにのって生きます~

 その日、女性を連れた婚約者オーガニは、それが当たり前であるかのような顔をしながら言ってきました。


「君との婚約は破棄とする」


 婚約破棄を告げられただけでも驚きです。急なことでしたから。しかし彼の理解し難い行動はそれだけでは終わりませんでした。彼は私の目の前で女性といちゃつき始めたのです。彼女とこういう関係だからお前は消えてくれ、と言わんばかりに。


 婚約者が女性と今にも口づけしそうになっている。

 そんな場面を見せられて冷静でいられるものでしょうか。


「どうしてそのようなことをするのですか、見せつけるのですか」

「はぁ? 事実を見せてやっているだけだよ」


 しかし彼は堂々としていました。

 女性との関係を隠す気は一切ないようです。


「そうですか。……ではこれで失礼します」


 彼と関わるのはもうやめよう。

 そう決意しました。

 これ以上色々見せつけられたらどうにかなってしまいそうだったからです。


 嫌なものは見ない。

 それもまた心の防衛なのです。


 とはいえ心は無傷とはいかず。


 どうして!

 なぜ私がこんな目に!


 彼の前から去ってから感情的になってしまった私は、山中にて、命を絶つような行動をとってしまいました。



 ◆



 ですが助かりました。


 気づけば知らない場所にいて、一人の男性に見守られていたのです。


「起きたか」

「……ええと、ここは」

「自ら命を絶とうとするとは愚かな」


 彼は山の神でした。


 正確には、彼がそう言ったのです。


「ま、よい。我は妻を探しておった、ちょうどよい。我の妻となれ」


 いきなりそのようなことを言われて何が何だか分かりませんでした、が、少々やけくそ気味になっていた私はそれを受け入れることにしました。


 どうせ婚約者は奪われた。

 取り戻すこともできない。

 ならばもう何がどうなっても良かったのです。


「安心しろ、酷いことはしない」


 好きにしてくれ、という気持ちでした。


 しかし山の神は意外に優しくて。

 私を乱暴に扱いはしませんでした。


 彼は紳士でした。


 私は人の世から離れたところで生きることとなり親とも会えなくなりましたが、それはそこまで気になりませんでした。もとよりそこまで好きでなかったからです。大嫌いというわけではありませんでしたが、必死になって再会したいほどの興味はなかったのです。


 むしろ、山の神である彼といる方が幸せでした。


 オーガニはというと、山の神が怒りで起こした山火事に巻き込まれて酷い火傷を負い、数年にわたって苦しんだ後に亡くなりました。


 すぐに落命できた方が良かったのかもしれない。

 家族でさえそう言ったほどの状態だったそうです。


 彼の恋人のような存在だった女性は、酷い状態のオーガニを助けるため怪しい呪術師を頼り、呪術師に命を捧げたそうです。もっとも、彼女が命を捧げてもなおオーガニが回復することはなかったのですけれど。


 とはいえ、私にはもうあまり関係ないことです。


 私はこれからも山の神の傍らで生きてゆきます。



◆終わり◆

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