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婚約破棄されたあたしはしばらく弱っていたんだけど、久々の外出で良い出会いに恵まれたんだ!

 あたしね、プルダスっていう男の人と婚約したんだ。


 恋愛から始まった関係ではなかったの。

 でも一緒にいれば心は通じ合うんだって信じてた。


 あたしの両親もそうだったから。


 父と母は自分たちの意思で結婚したわけじゃなかった。二人の家の意思で結ばれた。でも、いつしか通じ合って、一緒にいるうちにお互いかけがえのない存在になっていったって聞いてる。


 だから、あたしにだってそんな未来があるって信じてたの。


 その瞬間までは。


「婚約、破棄することにしたから」


 プルダスは急にそんなことを言ってきた。


「え……冗談、だよね?」


 意味が分からなかった。

 急にそんなことを言われたから。


 変な笑みが湧いてきてしまう。


 婚約破棄だなんて。信じられないし信じたくない。だってあたし、これから彼と一緒に生きて幸せになるって、そう信じていたのに。


「お前さ、何いっつもヘラヘラしてんの?」


 プルダスは不機嫌そう。


「え?」

「そういうとこムカつくんだよ。クソ女」

「どうしてそんなこと言うの……?」

「そういう女だから一緒に生きていくの嫌なんだよ!」


 ついに叫ばれてしまった。


「いい加減ヘラヘラすんのやめろよ! 馬鹿かよ!」


 プルダスは感情的に叫んだ。


 が、その数秒後には、冷静さの欠片を取り戻す。


「……ま、そういうことだからさ、さっさと消えてくれよな」

「待って。お願い、話をさせて。あたし、嫌だよ。あたし、プルダスと一緒に生きていきたいよ」


 するとプルダスは、ごみを見るような目をしながら「キモ」と発した。


「一緒に生きていきたい、とか、マジキモイわ」


 こうしてあたしは彼の前から去らなくちゃならないことになってしまったの。


 あたし、変なのかな……。


 あたし、キモイのかな……。


 ただ婚約者を大切にしたかっただけなのに……。



 ◆



 それからしばらくあたしは寝込んだ。


「寝ているの? 大丈夫なの?」

「うん、大丈夫」

「出てこないなら入るわよ?」

「……いいよ」


 親に心配かけてしまってるって分かっていても、それでも、どうしても心の中のもやもやが晴れなくて。


 どうやっても前みたいに明るく振る舞うことはできなかった。


 母があたしの部屋にわざわざ来てくれた時でも横になったまま。


「朝ごはん食べてないじゃない」

「ちょっとは食べた」

「駄目よ、もっと食べないと。あ、そうだ、粥を持ってくるわ。それなら食べやすいんじゃないかしら」


 気を遣わせて申し訳ないという気持ちはある。


「母さん、いいよ……」

「でも」

「今はこのままじっとしていたいんだ。大丈夫、そのうち治るから」



 ◆



 二ヶ月後、あたしは母の誘いで久々に外出した。


「いい天気ね~」

「うん」


 街へ買い物に行くんだって。


 外の空気は美味しい。

 もちろん家の中だって悪くはないけれど。


 でも出発したこの時はまだ知らなかった。


 ――この日一人の男性との運命の出会いが待っているなんて。



 ◆



 あれから五年。


 あたしは今、第一王子の妻になって、城で暮らしているの。


 とはいえ城ではまだまだしたっぱ――いや、それはちょっと言い方が変かもしれないけれど。ただ、周囲の人たちと比べると、あたしは城での生活歴はまだまだ。王族はもちろん、侍女の方たちも、あたしよりずっと前からそこにいる。だからあたしは皆に頼ってばかりだけど、可愛がってもらえている。


 日々、学び、成長する。


 あたしはまだまだ止まらないよ! ……なんてねー。


 母との久々の外出のあの日、あたしは持ち物をなくしていた彼に出会ったんだ。で、一緒に探したの。一緒に探しているうちに色々喋って仲良くなっていったんだ。それが二人の始まり。


 ちなみに、なくしたものは無事見つかったよ。


 そうそう、そういえば――前にあたしとの婚約を破棄した彼、あの後恋人の影響で酒とギャンブルに溺れて借金だらけになったんだって。


 今は借金返済を迫る怖い人から逃げ回りながら暮らしてるとか。


 気の毒にね。

 ま、内容が内容だから自業自得なんだけど。



◆終わり◆

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