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婚約破棄、そして人生は終わりを迎えた。
「君と生きてゆくのは無理だ。よって、婚約は破棄とする」
告げられた言葉に、すべてが終わった気がした。
彼のことが好きだった。
彼となら幸せになれる気がした。
けれどもそんなものは所詮私にとって都合のいい夢でしかなくて。
「婚約破棄を告げるだけまだ優しいだろう? 感謝してくれよな」
私が見つめていた光は失われた。
◆
その晩、私は、外を散歩している時に吸い込まれるように湖に飛び込んだ。
水は冷たい。
身体の熱を奪ってゆく。
次第に薄れてゆく意識。
だがこの世に執着はないので何も怖くはない。
むしろこの方が良い。
辛い思いを抱えながら生きるくらいならここで終わった方が良いのかもしれない、そんな風に思う部分もあって。
……最期、私は、夜空に浮かぶたった一つの月を見た。
どこまでも綺麗だった。
◆終わり◆




