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婚約破棄された私は雨粒が降り注ぐ中実家へ帰ろうとしていたのですが……。

 空は灰色の厚い雲に覆われ、降り注ぐ雨粒が地表を窓枠を叩く、天が泣いているかのようなその日。


「おまえとんの婚約はあなあ破棄することんにすんるわ」


 少々独自の方言が入った喋り方をする婚約者エルシオ・ソーセーは、私を自室へ呼ぶや否や、そう宣言した。


 赤と白と黄色のマーブル模様のバンダナで頭を包んだ彼は、その緑色の瞳で、真っ直ぐにこちらを見つめてくる。しかしそこに人間らしい温かみのようなものは存在せず。じっと見つめてもらえてもそこに良い意味などない。ただ、どうでもいいものを見るような視線を注がれるのみである。


「そういうんことだんから、も、ここから出ていってくんれよ」

「突然過ぎませんか。何か理由でもあるのでしょうか」

「はあん? いちいちそんなんこと言わんでいいんだ、とっとと出ていっちゃあそれでいいん」

「……そうですか」


 できることなら話をしたかった。

 互いに心を開き合えるよう努力したかった。


 でもそれは無理そうだ。


 残念ではあるけれど、もう諦めることにしよう。


「分かりました。それではこれで。今までお世話になりました、さようなら」


 その言葉を発したのが最後、私と彼は別れることになった。


 まずは実家へ帰えらなくてはならない。ということで、彼の家を出た。雨降りの中を歩いていると虚しさを感じるけれど、婚約破棄されてしまった以上は仕方のないことだ。


 しかし私は出会った。


 自分でも信じられないくらい、とても気の合う人に。


 雨降りの中を虚しさを感じつつ歩いていた私は、道に座って泣いている青年と偶然出会った。で、ちょっとした気まぐれから声をかけたところ、彼もまた悲しさや虚しさを感じているのだと知って。それから私と彼は互いに自分のことを打ち明けた。


 以降、私たちは定期的に顔を合わせるようになる。


 これまでの人生のこと、嬉しかったこと辛かったこと、隠さずに話した。


 そうしているうちに仲良くなった私と彼は、やがて、将来について考え出すようになった。こうして何でも打ち明けられる相手と生きていきたい、それは両者の願いであって。よく似ていた私たちは次第に二人で生きる未来を考えるようになり、最終的には結婚するに至る。



 ◆



 結婚から三年。

 今も私たちは仲良く楽しくやっている。


 もちろんたまにはすれ違うこともある。


 でもそれはたいしたことでない。

 たとえすれ違ったとしも、再び分かり合える日が来れば、未来への道は確かにそこにあるのだ。


 ちなみにエルシオはというと、あの後地域で『絶世の美女』と呼ばれている良家のお嬢様と結婚するも生活の小さなことにおけるすれ違いが多発してしまい、喧嘩が絶えない家庭となってしまったらしい。


 二人が暮らす家の近所の人によれば、今でも毎晩のように大喧嘩をしているらしい。それに加えて、最近では、物を蹴り飛ばすような音が聞こえてくることや男の悲鳴が響き渡ることもあるとの話だ。



◆終わり◆

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