婚約者の母から髪色が気に食わないと虐められたので、証拠を集めてから婚約破棄を告げます!
婚約者アロンとの出会いはとある催し物。
共通の趣味を持つ私とアロンはあっという間に仲良しになった。
私の髪は銀色。
彼の髪は茶色。
でも、私と彼にとっては、そんなことはどうでもいいことだった。
しかし。
「銀髪の女が息子の妻になるなんて許せない! 違う色の髪の女が我が家に入り込もうだなんて、悪質としか言えないわ! 我が家の大切な髪色を乱そうとして!」
アロンの母は私の銀髪を良く思わなかった。
彼女はとにかく私とアロンを引き離したいようで。しかし表立って動くことはできないらしく、アロンがいないところでだけ徹底的に虐めてきた。
暴言を吐かれるなんてよくあること。
大切な物を破壊されることもあった。
名誉を傷つけるようなことを言われたりされたりすることも。
一番酷い時には、彼女が雇った男に尊厳を傷つけられそうになった。
ただ、私は、すぐにやり返しはしなかった。
下手に動くべきでないと思ったからだ。
黙って水面下で証拠を集め続ける、それに徹した。
そして。
「アロン、悪いけれど、貴方のお母様の虐めにはもう耐えられないわ。よって、婚約は破棄とさせてもらいます」
その日、ついに言った。
彼は自分の母がしていたことを知らなかったようだった。
「知らなかったんだ! 何も! 知っていたら助けようとしたよ! 間違いなく! だから許して! 僕は悪くないんだ!」
彼は必死に引き留めようとした。
けれど無駄な努力だ。
私の心はとうに決まっている。
「さようなら、アロン」
こうして婚約は破棄となった。
その後、私が治安維持組織に提出した虐めの証拠によって、アロンの母が築いてきたものはすべて崩壊した。
彼女は犯罪者となった。
それまで彼女を素晴らしい女性だと讃えていた『女性協会』はそれを撤回、関係も解消。また、騙されていたということで、彼女へ償いの金の支払いを求める事態にまで発展する。
それからもアロンの母は関わりのあった複数の組織から関係解消を告げられる。
さらに、行いの詳しい内容が世に出るにつれ、彼女を強く批判する者が出現。中には過激な人もいて。家に大量の卵が投げ込まれたり、門に落書きされたり、ごみを庭に山盛りにされたりすることもあったようだ。
また、時には、当人であるアロンの母のみならずアロンをはじめとする周辺にまで批判の矛先が向くこともあったそうだ。
一方私はというと。
婚約破棄後しばらくはいくつかの手続きを同時に行わなくてはならず忙しかったが、その後数年して別の男性と結ばれることができた。
今は二人の子にも恵まれ穏やかに生活している。
最近は夫の影響で山菜採りを始めた。
これが案外楽しくて。
楽しいこと、趣味があるだけで、日々がより一層煌めくように感じる。
◆終わり◆




