婚約破棄されましたので、これからは美味しいものを食べるために生きてゆくことにします!
私アンネマリーは幼い頃から美味しいものを食べるのが好きでした。
親が美味しいものを食べることを好む性質だったということも影響しているかもしれません。食の質を重視する家で育ったことによって、食べることに親しんでいったのでしょう。
ですが、周囲の女性からは変わっていると言われることもありました。
年頃の女性たちとは重視している点が異なっていたからです。
そんな私もある程度の年齢になると婚約することとなります。
相手は良家の子息ポコタ。
家柄は似ているので仲良くなれそうな気がしていたのですが……。
「アンネマリー、お前の食好きにははっきりいって不快感しかない。よって、婚約は破棄とする。お前のような淑女でない女を妻にするなど苦痛以外の何物でもない」
ポコタはある日突然そんなことを言ってきて。
彼は私との関係を一方的に叩き壊しました。
私は何とか説得しようとしたのですが無駄でした。彼は私の言葉など一切聞こうとしない。私の声に対しては完全に耳を塞いでしまっていたのです。で、そのまま、婚約は破棄となってしまいました。
人生設計が狂ってしまいました。
ただ、こうなったらもうやりたいようにやろうと思い、これからは私自身がしたいことのために生きようと心を決めました。
私の人生ですから。
私がしたいようにするのです。
その後私は旅に出ることにしました。
美味しいものを求める旅です。
内容を聞いた両親は同行してくれることになりました。
家族三人で世界を巡る美食の旅。
どこまでも最高でした。
この世界にはまだまだたくさんの美味しいものがあるのだと、旅によって改めて再確認できました。
そして数年後。
多くの思い出を抱えて自宅へ帰ります。
「楽しかったわね~」
「あぁ、美味しすぎた」
両親はご機嫌。
もちろん私もとても幸せな気持ちになっています。
美味しいものを食べられる。
これこそ、この世において最高のことだと思います。
……私としては。
そうして家に帰ってから、元婚約者であるポコタが不審者に誘拐されたてこもる際の人質にされたことを知りました。
彼は数日にわたりたてこもりに付き合わされたうえ、犯人に殺害されたそうです。
恐ろしい事件です。
近くにいる時にそのような事件が起こらなくて良かった、心からそう思いました。
人質にされたうえ殺められるなど……想像するだけでもぞっとしてしまいます。
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それから数年、私は、レストランを経営する料理人の男性と結婚しました。
二人の子にも恵まれ。
幸福の中にあります。
今日は何を食べようかな?
そう考える時間が一番好きです。
◆終わり◆




