どうぞ、妹とお幸せに。~私はもうあなたたちとは関わりません~
私には婚約者がいる。
けれどもその日見てしまった、彼が私の妹と大人の関係にまで発展していることを。
その日、たまたまちょっとした用事があって、私は彼の家へ行った。すると応接室の扉がなぜか開いていて。誰か来ているのだろうなと思いつつそっと通過しようとしたら、婚約者ローウインと私の妹が室内でいちゃついていた。それも、かなり進展しているような、一歩踏み込んだようないちゃつき方。ソファにもたれかかるようにしながら互いに身を寄せていて、甘い声を漏らしている。
「ローウインさん……あの、これは一体……?」
私は自然に声をかけてしまった。
後から「声をかけるべきでなかったかな」と思う。
とてつもなく気まずい。
「あ……。ど、どうして、君が……?」
ローウインは混乱したような顔をしている。
妹は着ているワンピースが豪快にずれていて、胸もとなどは下着はあるもののほぼ丸出しになっていた。
「私は用事で来ただけです。通りかかったのです」
「こ、これは、違うんだ!」
「いえ、もう、何も言っていただかなくて結構です」
「待ってくれ!」
見ればすべて分かる。
何も聞きたくはない。
「ローウインさん、貴方との婚約は破棄します」
言い訳なんて聞く気はない。
「どうぞ、妹とお幸せに。私はもうあなたたちとは関わりません。では……さようなら」
その後私は実家へは戻らなかった。
とある友人に協力してもらい、別の国へ行った。
そこで一人の男性に求婚され、やがて、私はその人と結ばれた。
妹のいない世界は快適だった。
これまで彼女にはいろんなものを奪われてきた、だからこそ、彼女のいないところで生きられるというのは非常に爽やかな気分だ。
住み慣れていない街だなんてことはどうでもいい。それは時が解決してくれることだから。
結婚して数年。
私はかつて手を貸してくれた友人を通じて、ローウインと妹のその後について知った。
妹は私が消えたこともあってローウインと結婚しようと考え話を進めていたそうなのだが、彼が密かに関係を持っていた他の女性が先に子を宿してしまったことでその話は消えてしまったそうだ。というのも、その子を宿した女性の親が「責任を取れ」と言い、娘とローウインの結婚を強制したのだった。そこまで進んでいなかった妹は何も言い返せず、結局ローウインとは離れることとなってしまったのである。
その一件で心を病んだ妹は、今も自殺未遂を繰り返しているらしい。
そしてローウインはというと。
離婚はしていないが、相手女性とその親から定期的にお金を搾り取られ貯金も減って、悲しく生きているとのことだ。
◆終わり◆




