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婚約破棄 ~すべて終わった後の虚しさ~
私、貴方のことを、とても大切に思っていたの。
貴方と隣り合っていられること。
貴方と笑い合えること。
貴方と共に同じ屋根の下で生きてゆけること。
すべて私の誇りだった。
ふとした瞬間にでも、貴方と生きられる幸福を思い出して、何度も何度も噛み締めたわ。
でも貴方との関係は驚くほどあっさりと終わってしまった。
こんなに簡単に消え失せてしまうものに縋りついていたの?
愚かよね。
今ならそう思うわ。
でもその時は見えなかった。こんなに脆いものを大事に抱いているのだとは思わなかったの。婚約は確かなものに見えていたし、少しの迷いさえなくそう信じていた。
すべてが終わった今、孤独と虚しさを感じているわ。
貴方ともう一度やり直せたらどんなに幸せでしょう。
でももう無理なのだと知っている。
見つめ合うことも、笑い合うことも、もうできやしない。
だって二人は他人になってしまったから。
もう以前のように傍にいることさえできない。
かつて私がいたあの席には、いつか、私の知らない誰かが座るのでしょう。
◆終わり◆




