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大きな破壊の力を持って生まれた私は王子と婚約させられたのですが、その婚約を破棄されてしまいました。~そして国は変わる~

 世界を滅ぼしかねないような大きな破壊の力を持って生まれた私は、子どものうちに国の監視下に置かれた。

 そして監視の意味もあってか、年頃になるや否や国王の息子である王子ルイカスと婚約させられた。


 でも私は拒否しなかった。

 強く抵抗することは選ばなかった。


 私は私なりの幸せを見つけよう、そう思ったのだ。


 叶わない夢をみても虚しいだけ。それなら最初から叶わない夢はみず手に入れられる範囲の幸せを望む方が良い、そう思って。私は、婚約者であるルイカス王子との細やかな幸せを望むようになっていった。


 だが、手が届きそうな夢とて、すべてが叶うわけではなくて。


「君との婚約だが、破棄させてもらうことにした」


 ある日突然ルイカスからそう告げられてしまった。


 彼が言うには、彼には最近好きになったガーベラという女性がいるらしい。彼女は元娼婦なのだそうだが、それでも構わないと迷いなく言えるほど好きなのだとか。で、私のことを思い出すだけでも気分が悪くなるということだ。


「そうですが……分かりました。残念ですが……その感じだと、私は消える方が良さそうですね」


 そう言うと。


「分かってくれるか!」


 嬉しそうな顔をするルイカス。


 こんな形で彼の嬉しそうな顔を見たくなかった。


 彼の隣で生きていたかった。


 多くは望まない。

 ただ、彼と二人隣り合っていたかった。


 でも無理そうだ。


 彼の心はガーベラただ一人だけに向いている。私のことなど、今の彼には一切見えていない。いや、見えていないどころか、私という存在を鬱陶しく思っているのだろう。


 最初は仲良くなれそうな雰囲気だっただけに悲しい。


「そういうことなのでな! さらば!」

「はい、さようなら」


 細やかな望みさえ叶わず。


 私は城から去ることになった。



 ◆



 城を出たその日、私は、道端で倒れている一人の男性を見かける。


 彼は家のない人にしては良い服を着ていた。

 いつも外にいる類の者とは思えない。

 宿がとれなかった旅人か何かだろうか。


 私は彼を近くの治安維持組織の基地にまで連れていった。


「倒れていた方です」

「あぁはい。おっけー。じゃ、預かりますー」


 小規模な基地の受付にて倒れていた男性を渡し、その日は付近の宿に宿泊した。



 ――翌日。


「昨日はありがとうございました!」


 あの基地の受付をしていた男性が宿にやって来た。


 わざわざ来るなんて何事かと思ったのだが。


「あの方、隣国の王子だったそうでー、届けていただけて助かりました! 今日はそのお礼をと思ってー」


 倒れていたあの男性は偉い人だったようだ。

 放置しなくて良かった、今さらながら強くそう思った。


「あ、そうだ、今日の晩ちょっといいですか?」

「なぜですか」

「実はですねー、ちょっと、話したいことがありましてー」


 急にこんなことを言い出すなんて怪しい。

 治安維持組織の人間なら不審者ではないだろうとは思うのだが。


「……分かりました」

「じゃ、夜にまた、ここに来まっす!」

「ありがとうございます」


 彼は別れしなにオッズと名乗った。



 ◆



 オッズは私がルイカスに捨てられたことを知っていた。

 で、それを踏まえて、『その力を国を変えるために使わせてほしい』という話を振ってきた。


「あの……急過ぎて意味が分からないのですが……」

「王家には闇が多過ぎます。特に金に関しては酷い。ということで、我々は、あの王家を倒して国を良くしたいと考えています」


 日頃ならそんな怪しげな話には乗らなかっただろう。

 だがその時の私はルイカスに対して複雑な感情を抱いていて。


「分かりました。では、協力します」


 だからだろうか、そんな風に答えてしまった。


 そしてそこから私の第二の人生が始まる。


 根っこからひっくり返す。

 王族の時代は終わり。


 国を変える。



 ◆



 それから一年ほどが経過し、ついにその時が来た。


 私たちはこれまで念入りに準備してきた。が、これまでは根回しはしても表立って動くことはなかった。けれどもそれはあくまで、これまで、であって。今日からは変わる。今日からは実際に動き出す。


「国を変えるぞおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 仲間内で誓う。


 きっと見よう。

 新しい世界を。



 ◆



 開戦から八ヶ月、決着がついた。


 治安維持組織のふりをしていた国を変えたい派とこれまでの利権に溺れて贅沢していたい王族指示派の戦いは激しかったけれど、こちらには以前助けた隣国の王子の協力もあったので、勝ちを手に入れることができた。


「王は死んだ! 本日をもって王族の支配は終わり、この国は民のものとなる!」


 王の首を手に、私たちのリーダーが宣言する。


 それは、新しい時代の幕開けだった。



 ◆



 革命後、私は一線から退いた。


 もう戦いには生きない。

 オッズと結婚し穏やかに暮らす。


 そういえばこれは先日元仲間から聞いたのだけれど――ルイカスは即座に処刑される以上の屈辱を味わうこととなったそうだ。


 衣服は剥ぎ取られ、人々の前に出され、罵声を浴びせられる。

 それから色々虐められて。

 死にたいと言ってもなかなか死なせてはもらえず。


 ついにどうしようもないほどぼろぼろになると、棒にくくられたまま放置され、食べ物も貰えずに死を待つだけとなる。


 ちなみに、彼の妻となっていた女性ガーベラも、同じような目に遭ったそうだ。


 もっとも、今も私にはそれほど関係ないことだけれど。


 ちなみに私とオッズの間には三人の子がいる。

 もう少し詳しく言うと、第一子は女の子で第二子と第三子は男の子だ。


 毎日家事育児で忙しくたまには愚痴を言ってしまうが、全体的に見れば幸せに暮らせていると思う。



◆終わり◆

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