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婚約破棄されたので速やかに実家へ帰ります。~皿洗いを極めていただけなのに王子に見初められ結ばれることとなりました~

「アンドレア・フォン・エーベーダンゴス! 君との婚約は本日をもって破棄とする!!」


 我が家と同じ領地持ちの家の次男である婚約者バアンはある日突然宣言してきた。


 そんなに力んで目を剥かなくても……と内心突っ込みを入れつつも、私は笑顔で「承知しました。それでは、私は、本日をもってバアン様の前から消えますね」と返した。


 すると彼は満足そうに複数回頷いていた。


 頷くたびいびきのような音をこぼすのは謎でしかないが……ま、もう他人に戻るのだし、そこには触れないでおこうか。


 私は速やかに実家へ帰る。


「あら、帰ってきたの? 今日は早かったわね」

「うん。実は婚約破棄されたの」

「え? え、っと……何て? 今、何て言ったの? 婚約、破棄……? えっと、その、聞き間違い……よね……?」


 ワインレッドのシックなドレスを着用している母親は混乱したように目をくるくる回す。


「いいえ、事実よ」

「え、え、え……ええええええ!!」


 彼女は絶叫した。


 その大声で近くの窓の枠が外れたが、それに関しては今は放っておくこととしよう。窓枠くらい即座に直さなくても問題ない。母親が落ち着いてからでいい。


 一旦部屋を移動する。


「そんな……信じられないわ……貴女ほどの美しい女性が婚約破棄されるなんて……」

「驚かせてごめんなさい」

「それはいいけれど……これからどうするの?」


 そうだ。私はここを出ていく予定だったのだ。今さらここに残ると言ったら迷惑だろうか。予定変更なんて認めてもらえないだろうか。


 そんなことを思いつつ。


「あの……ここで暮らす、とかは……駄目?」


 一応質問してみると。


「いいえそれは構わないわよ。貴女は私の娘だもの」


 そう言ってくれた。


 安堵する。

 これで取り敢えず住むところは確保できた。


「母さん、これからは家事手伝うわね。皿洗いとか、やってみる」


 以降、私は、母親に習ったり本を読んだりしながら家事について学んだ。で、色々な家事を経験する中で、皿洗いが得意なことが判明。そのため私は皿洗いを主として動くようになった。


 数か月後。

 首都で開催されるという『皿洗い競技会』に参加することとなった。


 誰かの推薦があれば出場できるそうなのだ。


 予想外の展開に戸惑いつつも。

 賞金も出るとのことだったので、参加してみることにした。



 ◆



 その『皿洗い競技会』にて、私の運命は大きく動いた。というのも、競技会を見に来ていた王子に見初められたのだ。その場で王子から直接声をかけられ、そのまま城に連れていかれた。


「貴女の皿洗いテクに惚れました。結婚してください」

「え……あの、少し、意味が……」

「考える時間はもちろん与えますよ。今すぐの返事でなくても構いません。どうか、検討だけでも、お願いできないでしょうか」


 王子にそう言われては断ることはできず。

 私は彼との関係を築くかどうか検討することとなった。


 その後一旦家に帰る。


 そこで親に事情を話して相談する。


 両親は「貴女が望むのならそれでもいい」と言ってくれた。


 私はしばらく一人で考えていたが、数日後、城へ王子のもとへ行くことを決めた。



 ◆



 その後私は彼と結婚。

 今は毎日のように彼の前で皿洗いの技術を見せている。


「やはり貴女の皿洗いテクは素晴らしいです、感動します」


 そう、彼は皿洗い観賞が趣味だったのだ。


 王子の妻として夫に皿洗いの技術を披露する未来など欠片ほども想像していなかったけれど、これはこれで悪くはないような気もする。


 ちなみにこれは侍女から報告として聞いたことなのだが、元婚約者であるバアンは酒を飲んで全裸になり婦人用宿に突撃したことで治安維持組織に拘束され、牢屋に放り込まれることとなってしまったそうだ。


 また、内容が内容だったため、牢を出てからも女性からは一切相手されなくなったそうだ。


 彼が道を歩く時、通行人の女性たちは自然と彼から離れていったそうだ。



◆終わり◆

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