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愛している人に婚約破棄された日から数年が経ち、私はまた歩き始めます。

「悪いが君より素晴らしい女性を見つけたんだ。だから君との婚約は破棄とする」


 瞬間、頭蓋に雷が落ちたかと思うような衝撃が駆け抜けた。


 それによって何も分からなくなってしまい。

 私はその場で崩れ落ちて。

 気づけば彼の家のお手伝いさんに連れられて家の外へ出ていた。


 私は彼を愛していた。

 にもかかわらず彼は私ではない女性を選んだ。


 しかも、婚約していたというのに……。


 生涯のパートナーとなることを当たり前と思っていたけれど、それは間違いだったのか。



 ◆



 後に家族から聞いた話によれば、私の婚約者だった彼ツルーには数ヵ月前に出会って燃え上がっている女性がいたようだ。つまり、彼が言っていた『君より素晴らしい女性』というのは、その人のことなのだろう。


「いいのよ、もう気にするのはやめなさい。あんな男、貴女には相応しくなかったのよ」


 母はそう言って励ましてくれるけれど、なかなか彼への想いが消えなくて。


 私はしばらく元気を取り戻せなかった。


 彼は別の道へ進んだのだから私も同じように新たな道を行けば良い。

 頭では分かっていても。

 やはりどうしても心がついてこない。


 だって、つい先日まで、私は彼だけを愛していたのだ。


 それを急に変えろだなんて。

 そんなのは無茶だ。



 ◆



 ツルーに切り捨てられた日から数年。

 私はとあるお茶会にて一人の青年と出会う。


「あの、少しお話しても?」


 凛々しくミステリアスな雰囲気の彼にそう声をかけられたことが、すべての始まりとなった。



 ◆



 お茶会にて声をかけてきた彼の名はプルテ・オーガストといった。


 彼はこの国の王の息子。

 次男だそうだ。


 王の位は継がない、とのことで、私は彼の妻となることを決めた。


 彼はプライドが高くなく一途な人だったから、彼となら二人で生きてゆけると判断したのである。


 もちろん王子の妻となれば大変なこともあるだろうけど。

 彼となら進んでいける気がした。



 ◆



 プルテとの出会いから二年半、私は彼と結婚し、今は王子の妻としての教育を受けつつ忙しくも充実した日々を謳歌している。


 幸運だったのは、彼も彼の周囲も優しい人が多かったことだ。


 城に住むようになった直後一時的に体調を崩したのだが、その時には、侍女らが気にかけてくれた。


 本当にありがとう。

 彼女たちにはただただそう伝えたい。


 一方ツルーはというと、あの女性と結婚しようとするも相手の家柄が明らかになったことによって親から大反対され、結局その女性と結ばれることはできなかったようだ。


 で、他の女性と結婚させられたのだが。


 結婚後も、愛している女性との関係はやめず。

 その結果、妻にそのことを理由に離婚を切り出されることとなり、結婚から一年も経たず離婚となってしまったそうだ。


 さらに、多額の慰謝料も払わされることとなったらしい。


 ツリーは「結婚するなり浮気していたらしいよ」と周囲から言われるようになってしまい遠くへ引っ越すこととなった。


 そして浮気相手の女性は、請求された慰謝料が払えず、身を売ることとなったらしい。



◆終わり◆

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