超能力令嬢にしてみれば、ざまぁだって簡単なこと。
生まれつき特殊な能力を持っていた良家の娘アンナには、美男子という言葉が相応しい三つ年上の婚約者がいたのだが。
「ごめん、きみとはもう終わりにする」
急にそんなことを言われてしまった。
「待って。どうして? どうしてそんなこと……」
「簡単なことだよ、ぼくにきみは相応しくないと思ってきたんだ」
「相応しく、ない……?」
「そ。ぼくにはもっと美しい人が似合うんだ。きみみたいな中の上じゃつり合わない。だからきみと結婚するのはやめることにしたんだ」
婚約者ポールは常に穏やかな笑みを浮かべている。
「だからさ、もう終わり。いいね。じゃ、そういうことだから、さようなら。……ま、きみも暇潰しにはなったよ」
アンナはその場ではそれ以上何も言い返さなかった。
だが腹は立てていた。
婚約しておきながら後になって破棄するという無責任さに対して。
許せない。
アンナの心にはそんな言葉ばかりが蔓延っていた。
◆
数カ月後。
彼女は復讐を決意する。
もはや彼女はとめられる者などおらず。
「絶対に許さない」
アンナは超能力を使った。
すると、急激に空が曇り始め、大雨が降り出す。
その時たまたま屋外にいたポールは慌てて木の下に隠れ雨宿りしたがそれが失敗で。彼は木に向かって落ちてきた雷に打たれることとなってしまう。雷に打たれた彼はその場で倒れ込んだ。
だがそれで終わりではなく。
倒れていたポールはきつねに似た大きな魔物に襲われ、ひきずるようにして山奥にまで連れていかれてしまい、そこで死を迎えた。
その後行方不明になったポールを捜索する人員が配置される。
が、結局、数十年にわたって彼の亡骸は見つからなかった。
ちなみにアンナはというと、資産権力共にある貴族と結婚し、贅沢をしながら暮らした。
◆終わり◆