婚約破棄を告げられた美人令嬢は妹とケーキを食べるのが何よりもの楽しみです。
美人令嬢として有名なローゼリアは親の知人の紹介でとある青年と婚約した。
ローゼリア自身はそれを望んではいなくて。
けれども流れに乗るようにそれを受け入れた、仕方がないからと。
だが、婚約から数ヵ月が経つと。
「ローゼリア、君とはもう生きていかない」
彼女は婚約者ヴォンヴォガーから告げられる。
「婚約は破棄だ」
ヴォンヴォガーは「美しさは認めている、が、君にはそれ以上の魅力がない。君はただ美しいだけ、それでは人形だよ。魅力的な女性、ではない」とまで言って、ローゼリアと離れることを宣言した。
そしてローゼリアは実家へ戻る。
「はーい……、って、え!?」
急に帰ってきたローゼリアを迎えたのは彼女の妹であるロロノ。
「帰ってきてしまったわ」
「お姉さま!? どうして!?」
ロロノは信じられないというような表情で戻ってきた姉を見つめる。
「実は……婚約破棄されてしまったの」
ローゼリアは苦笑しつつ本当のことを話した。
その後ローゼリアは両親にも事情を話す。すると両親は「もうここにいればいい」と言って。それで彼女は再び家族での暮らしに戻ることとなった。ローゼリアは受け入れられたのだ。
残りの手続きはローゼリアの父親がほとんど行った。
それからローゼリアは週に何度か妹ロロノとケーキを食べる会を開くようになった。
もともと彼女は妹が好きだったのだ。
とても大切に想っていた。
そういう意味では、婚約破棄されるという残念な形ではあるものの、妹と暮らせる喜びはあった。
「これ……! お姉さま、とっても美味しい……!」
「栗のケーキよ」
「え、っと……栗の、ケーキ?」
「珍しいわよね。期間限定の新商品ですって」
「へぇー! 素敵!」
ケーキを食べる会には時折妹の友人も参加する。が、それは本当に時折であって、基本的には姉妹二人だけが参加する形となっている。仲良しな二人にとってはとても愛おしい時間なのだ。甘いものを食べ、お茶を飲んで、おしゃべり。たったそれだけのことだけれど、二人の幸せを大きく膨らませる。
「これからも色々食べたいわね」
「本当に! お姉さまの言う通り!」
こうして幸せに暮らせているローゼリアとは対照的に、ヴォンヴォガーは生理的に無理なタイプの女性と親の都合で結婚させられることとなり毎日のように吐き気を催してしまいながら苦しんで生活している。
◆終わり◆