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婚約破棄されてしまったけれど……気にせず生きるわね!

 私、春が好きなの。


 自然の中に新しいものが芽生えてくる季節。

 生命の神秘を感じられる。


 だから春が一番好きなの。


 でも、今年の春は、あまり笑っていられるようなものではなくて……。


「アンナ、君とはもうやっていけないよ。君と夫婦になって生きても幸せになれる気がしない。だから婚約は破棄するね。じゃあ、さようなら」


 優しい婚約者フォルマンは突然そんな風に告げてきて、それによって私と彼の関係は終わってしまった。


 フォルマンはいつも紳士的で優しかったわ。だから好きだった。強い恋愛感情かというとはっきりしないけれど、彼と生きてゆけることを嬉しく思っていたし、彼が婚約者であることを誇りに思っていたわ。


 でも……どうやらすべて気のせいだったみたい。


 私は夢を見ていたのね。

 何もかも、自分にとって都合のいい夢でしかなかった。


 ……悲しくはある、それは事実よ。


 でもいいわ! こうなったら気にせず生きるわ!


 きっとそれが一番幸せになれる方法だと思うの。

 だから前を向いて進む。


 婚約破棄された私は、取り敢えず実家へ戻って、それから今後のことを考えることにしたわ。



 ◆



 フォルマンに婚約破棄された春から、もう何度も春が過ぎたわ。


 何回過ぎたか、なんて、正直覚えていない。

 きちんとは数えていなかったから。


 でも私は今とても幸せに暮らせているの。


 今は母親が所有していた山の中の別荘で暮らしているわ。この別荘、とても広い庭がついているのよ。で、そこで色々な植物を育てているのだけれど、それがとても楽しいの。


 いろんな植物が煌めき出す春。

 やっぱり好きよ。

 たとえ辛い思い出があったとしても、それでも、私は春を愛おしく思い続けるわ。


 そんな生活をしている私だけれど、先日、別荘を覗きに来た母親がフォルマンのその後について教えてくれたの。


 べつにそれほど興味はなかったけれど……一応聞いたのだけれど。


 彼は優しい、でも、優しさゆえに女性から想いを告げられると拒否できないようで。何人もの女性から想いを告げられ断れなかったために、五人以上の女性と同時に恋人関係になるというようなことをしてしまっていたそうなの。


 でも、ある時そのうちの一人と婚約することになって、そんな最中に彼が複数の女性と恋人関係であったことが発覚。婚約者となるところだった女性はそのことを一切知らなかったため、当然大問題になって、その婚約話は消えてしまったそう。


 けれど本当に恐ろしいのはそこからで。


 恋人らのうちの一人の女性が「彼が愛しているのはわたしだけ、いいえ、そうでなくてもそうにする、そうなの」と主張して他の恋人だった女性を襲うようになったらしくて、何人もの女性が犠牲となったらしいわ。


 で、最終的にはフォルマンまでもが襲いかかる対象となってしまったらしくて。


『わたしを愛さないあなたなんて要らない!』


 そう叫んで、女性はフォルマンの胸を刺し貫いたそうね。



◆終わり◆

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