婚約破棄、しかし意外なことが起きて。
大勢の客がいるレストランにて。
「君との婚約は破棄とするよ」
一緒に食事をしていた婚約者オープソンからそう告げられた。
あまりに唐突で。
何も考えられなくなる。
聞こえてくるのは憐れみの小さな笑い声。
サラダのドレッシングの味が脳に至らない。
「そんな……どう、して……」
「君よりずーっと魅力ある女性に出会ったんだよ。だから君はもうどうでもいい」
心ががらがらと音を立てて崩れていくようで。
「そんな……」
憐れみの控えめな笑い声は大きく膨らんでゆく。
憐れな女でいたくない。
でもそれもまた事実であって。
どうしようもない。
「そういうことだから、君と会うのは今日で最後だからね」
刹那、爆発が起きた。
「え」
視界が暗くなる。
焦げた匂いがした気がした。
◆
私は助かった。
瓦礫の山から助け出されたのだ。
「良かった、無事で……」
「あの……これは……一体何が……?」
助けてくれた人によれば、レストランに隕石の欠片が落ちたらしく、それによって爆発が起きたそうだ。
幸い、私の身体にダメージはなかった。
ただ、前の席で食事して婚約者だった彼は、跡形もなく消し飛んだようだ。
だがそれでもいい。
どのみち私たちは一緒にはいられない運命だったのだから。
◆終わり◆