婚約破棄、秋と共に私もまた。
秋は好きな季節だった。
吹く風は心地よく、過ごしやすい気候で、実りもあって。
でも。
「おまえんとはもうやってんいけんので婚約は破棄とするんなん」
婚約者から終わりを告げられたことで。
今年の秋は悲しいものとなってしまった。
彼のことは嫌いでなかった。
否、むしろ好きだった。
彼と一緒に生きていけるなら嬉しい、素直にそう思っていたのだ。
けれども彼はそうではなくて。
「もうおまえんの顔は見たくないんでん、とっとと去ってほしいんだよん。これでお別れんなのでいいな?」
彼はそう言って、私との関わりを強制的に終わらせたのである。
私はただただ辛かった。どこまでも悲しかった。この悲しみは海みたいだと思った。どこまでも暗く、どこまでも深い。あの大海のような悲しみの中では、人などちっぽけで、何もできない。どれだけ技術が発展しても人の心までは強くはならない、ということなのだろう。
ならばもう、すべてを終わりにしてしまおう。
好きな秋と共に終わろう。
心は決まった。
もう迷わない。
◆
美しい秋。
それの終わりと共に、私は長くはない生涯を終えた。
◆終わり◆