191/1194
婚約破棄 ~愛を抱いて告げる別れ~
「きっと幸せになろうね」
そう言って最高の笑顔でいる私。
「もちろん! 絶対幸せにする、約束するよ」
そう誓った柔らかな表情の彼。
二人の時は永遠。
信じていた。
――彼の冷たい言葉を聞くまでは。
◆
今朝私と彼は築いてきたものは崩れ去った。
楽しかったことも、悲しかったことも、怒ったことも、その後の仲直りも――すべて黒い絶望に塗り潰されて今はもう何も見えない。
今や私の視界に光はない。
僅かな希望の欠片さえ存在しない。
かつて抱いていた愛だけはここにある。
けれどもこれはもうどうにもできないから置いてあるだけのもの。
愛があれば何でもできる。
そんな言葉は嘘だ。
愛があったとしても過ぎた日々は絶対に帰らないのだ。
「あなた――今も愛しているわ。……いいえ、今だけではない。これから先もずっとよ。ずっと……あなただけを愛している、誓えるわ」
暗闇の中、私は誰が発したわけでもない問いに答えて。
そして今回の生を終えた。
◆終わり◆