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婚約破棄、私は愛を得られなかった。
その日、私は見てしまった。
婚約者である彼が見知らぬ女性と深い関係になっているところを。
響きわたる男女の甘い声。
私は思わず走り去ってしまった。
見て聞いていることに耐えられなくて。
その日はそれで終わったのだけれど。
翌日彼から呼ばれて。
「昨日は見せちまって悪かったな」
「驚きました」
「あ、そうだ。伝えておこうと思って。……これを機に、あんたとの婚約は破棄するから」
婚約破棄を告げられた。
私は最後まで彼から愛を得られなかった。
◆
それからの日々は最悪だった。
何かされているわけでなくとも心は地獄の釜の中。
息をしているだけでも死にたくなるほどであった。
毎日は、痛く、辛く。
それでも、親に支えられながら、ただ生きる……。
いつの日かまた明るい空を見られるように。
◆終わり◆