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愛されなくてもけなげに待ち続けてきた婚約者に暴言つきで婚約破棄を告げた心ない男の末路

 ルージュは美しい少女だった。

 親が決めた婚約者で三つ年上のルインクを慕っていた。


 ルインクはルージュを一切愛さなかったけれど、ルージュは彼を愛し、愛されていないと知りながらも彼が来てくれるのを待っていた。


「いつかはきっと、夫婦になれるのです。私はいつまででも待てます」


 それがルージュのくちぐせだった。


 彼女は少々頑固なところがあって。

 周囲が「やめたほうがいい」と言っても聞かなかった。


 そんなある日。

 ルインクは初めて自らルージュの家へ行った。


「ルージュ、実は伝えたいことがあってな」

「はい」

「恋人が子を宿したので、婚約破棄させてもらう」


 衝撃を受けつつも必死に平静を保とうとするルージュ。


「ま、最初からそのつもりだったんだ。俺は親が決めた婚約なんぞぜーったいに嫌だったからな。他の女に子ができれば婚約者とは終われるだろう? 最初からこれを狙ってたんだよ、はは」


 ルインクはくふふと笑う。


「お前みたいな色々小さくてつまらん女、相手にするわけないだろバーカ」


 こうしてルインクは一方的に婚約を破棄した。


 ◆



 婚約破棄の数日後。

 ルインクとの子を宿していた女性が自宅にて無残に殺害されていた。


 女性は実家で生活していたのだが、常に一緒にいる母親が少し外出した隙に殺められたのだ。母親が帰宅した時、女性は既に息絶えていて。腹と胸には刃物でつけられたような傷が痛々しく残っていた。


 そのことを聞いたルインクはゾッとする。


 まさかあの女が……? と、彼はルージュの犯行を疑った。


 そして、それと同時に、自分も同じようにされるのではないかという恐怖に苛まれ。強すぎる恐怖で心という器が壊れ、正気を失い、家から走り去ってしまって。彼はそのまま森へ消え、行方不明となった。


 ただ、女性を殺害したのはルージュではない。


 幼い頃森で倒れていたところをルージュに助けられて以来彼女を密かに愛していた青年こそが、その犯人であった。


 ちなみにルージュはというと、婚約破棄後誰かと結婚することはなかったが、親から継いだ事業を発展させることに成功し大金持ちになった。


 その後は、孤児を数人引き取り実の子どものように可愛がって、穏やかに暮らしていた。



◆終わり◆


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