同性の幼馴染みに婚約者を奪われてしまいましたが、その後より良い出会いがあり、幸せを掴むことができました。
「悪い、婚約は破棄させてもらうわ」
婚約者ノーブルからそう告げられたのは、ある穏やかな天候の日だった。
「え……婚約破棄、ですか……? どうして急にそのようなことに」
いきなりのことに声が震えてしまう。
「あんたより良い人を見つけたんだ。俺は彼女と生きていくことにする。だからあんたはもういいよ。もともと俺のことそこまで好きでもないみたいだし」
ノーブルは一切躊躇わない。
むしろ少し楽しそうな表情でそんなことを言ってくる。
「そんなこと……」
「あぁもういいよ、何も言うな。じゃ、そういうことだから。俺今から仕事の用事あるし、もう帰ってくれる?」
こうして私は彼の家から追い出された。
何度も来たことのあるノーブルの家だが、多分、もうここへ来ることはないだろう。
だってもう婚約者同士ではないから。
後日、ノーブルが気に入っている女性が私の幼馴染みルージュであることが発覚した。
「きみホント可愛いよなぁ。夜も最高だったし」
「ええ~? そうですかぁ~? っていうかぁ、ここでそういう話されるとぉ~、恥ずかしいかもぉ……」
たまたま二人が歩いているところを目撃したのだ。
ルージュは私の婚約者との話を聞いてくれていた。だから彼女が手を出すとは思わなくて。驚くと共に、がっかりした。
だってそうだろう?
幼馴染みの婚約者に手を出すなんて、おかしな話ではないか。
ただ私の方にも動きがあった。
ノーブルとルージュが歩いているのを目撃したその日、街中で、スパイス店を探しているという一人の男性に声をかけられたのだ。
私はスパイス店の場所を知っていたため、その三十代くらいと思われる男性を店まで案内した。
すると大層なほど感謝されて。
その日はそこで別れたのだが、後日、自宅に一通の手紙が届いて。
『先日はありがとうございました』
その文章から始まる手紙。
隣国の王族からのものだった。
どうやら彼は隣国の王子だったようだ。
また、そこには、『お礼と言ってはなんだがもう一度お会いしたい』というようなことも書かれていて。ただのお礼状ではなかったようだった。まさかの展開に家中大騒ぎになってしまった。
「行ってきなさいよ! せっかくだし!」
特に母親は強くすすめてくれた。
こうして私は隣国の王子と知り合うことになる。
◆
あれから数年、私は、隣国の王子と結婚した。
年齢は十ほど離れているが、彼との暮らしは上手くいっていると思う。
他国へ嫁にいっている未来なんてまったく想像していなかったけれど……運命とは不思議なもので、自然となるようになっていった。
今は王子の妻として勉強しつつ忙しく生活している。
環境は非常に良い。
周囲の侍女なども温かい。
そういえばこれは母親からの手紙で知ったのだけれど、ノーブルとルージュは結婚したそうだ。
だが、結婚して一年も経たないうちにノーブルが別の女性と定期的に会うようになり、それに心を乱されたルージュは自殺未遂を繰り返すようになったらしい。
それでもノーブルは気にせず別の女性と遊んでいて。
腹に子を宿していたルージュだったが放置され続け、ある日、突然家からいなくなって行方不明となったそうだ。
で、二人の家には書き置きがあり。
その書き置きによれば『もう私は要らないの、だから逝きます』とのことだったそうだ。
その後も似たようなことを繰り返したノーブルは、数名の女性の親から訴えられ、最終的に大量のお金を支払わなくてはならないこととなってしまったらしい。
◆終わり◆