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婚約破棄されたわたくし、海の中にあるあれになりましたわ。~さっくり復讐して参りますわよ~

「君とはもう終わりにするよ」


 彼と初めて出会ったのは海でしたわ。

 夕陽を眺めていたら彼がたまたま歩いてきて、そこで言葉を交わし、知り合いになりましたの。


 それから婚約するところまで行ったのですけれど……終わってしまいました。


「これからは本当に愛せる人を愛そうと思う。じゃあ。婚約は破棄で。さようなら」


 彼にはわたくし以外の女性を愛してしまったようです。

 そしてもうわたくしのことは愛せないようなのです。

 もはや完全に心変わりしてしまったようで、残念ですわ。


 婚約破棄を告げられたその日、わたくしはあの海へ行きました。


 初めて彼に会った思い出の場所。

 でも今はもう幸せな記憶ではありませんわね。


 涙の粒がこぼれて。


 それが海面に落ちた、瞬間、海面から強い光が放たれました。


「っ!?」


 思わず目を閉じてしまいます。


 で、次に意識を取り戻すと、わたくしは昆布の魔物コッブブになっていましたわ。


 これは海の比較的陸に近いところに生息する魔物。この国ではよく見かける魔物。たまには食用とされることもあって皆によく知られている種類の魔物ですわ。


 これからどうすれば良いのか……。

 迷いますわ……。



 ◆



 数日後、わたくしの婚約者だった彼とその相手の女性が海に来ましたわ。


「ここ、僕が大好きな海なんだ」

「ええ~そうなんですかぁ~」

「前の婚約者との思い出の場所だった……」

「もう! またその話! やめてくださいっ」

「そうだよね、ごめん」


 早速いちゃつく二人。


「でも! 海って大好きですぅ~」


 駆け出し勝手に海に入る女性。


 さて、では、復讐してやりますわ。


「きゃああああああ!」


 女性の足首を掴み、勢いよく海に引きずり込む。


「お、おい! 大丈夫か!」

「いや! 助けて! 何!? いやああああぁぁぁ……っぁ……」


 そこにいたコッブブがわたくしだなんて、誰も思わないでしょう。


 取り敢えず女性を引きずり込むことに成功しましたわ。


「今行くから! すぐに!」


 ばしゃばしゃと音を立てながら海に入ってくる元婚約者。

 次の目標は彼。

 絶対に逃しませんわ。


「って、うわ! うわなんだこれ!? うわわわわわわ!? わわわわぁぁぁぁぁ!?」


 人間というのは腕力も知能もそこそこある生き物ですけれど、本来海で生きる生物ではありませんわ。水の中で自由を奪われてしまえば何もできないというものですの。海の中でなら、海に慣れているコッブブの方が圧倒的に有利です。抵抗すれば抵抗するほど、人間は危険な目に遭いますのよ。


「やめっ、やめろこいつ! おい! 離せこのゴミ魔物!」


 彼もきっと気づいてはいないのでしょうね。

 そのコッブブがわたくしだなんて。


 でも良いのです、その方が効率的ですわ。


 そうして、わたくしの復讐は終わりましたわ。



 ◆



 あれから十二年。


 わたくしは今もコッブブの姿のまま。

 もうじき寿命でしょう。


 コッブブは人ほど長くは生きませんもの、十二年も生きられただけでも上出来ですわ。


 それにしても。

 海に漂いながら見上げる空、本当に、いつも美しいですわね。



◆終わり◆

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