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失礼はないようにしてきたつもりだったのですが、女のくせに自分への忠誠心がなさすぎると怒った婚約者から婚約破棄を告げられました。

「アリシア、お前、どこまでも可愛げがないな!」


 その晩、私は、婚約者カフス・ビュッフェに呼び出されました。


 彼は怒っているようで。

 とてもまともに話し合えそうな状態ではありませんでした。


 少し酔っているようにも見えます……。


 これはまた厄介そうです。なるべく巻き込まれないようにしたいのですが。今はただとんでもないことに巻き込まれないよう祈るのみ、でしょうか。私にできることなんてそれくらいしかありません。


「女のくせに俺に従わない、女のくせに俺に意見を言う、何なんだ! あの態度は!」

「飾るお花の件でしたらあれは単なる提案です」

「はぁぁん!? 何だと? もう一回同じことを言ってみろよ!!」

「あれは単なる提案です」

「女のくせに俺への忠誠心がなさすぎる!」


 彼は不機嫌になるとすぐに昔のことまで掘り起こしてきます。

 しかも当時は特に怒っていなかったことまで思い出したかのように言い出すので、さらに鬱陶しいのです。


「ああもういい! お前との婚約は破棄だ!」


 彼は勢いのままに叫びました。


「あ、はい。そうですか。分かりました、では……私は去りますね」


 私は一旦彼の前から去ります。

 長い間付き合ってきた小型録音機と共に。


 そう、私はこれまで、彼が私に対して言う酷い言葉をこっそり録音していたのです。


 この国ではまだあまり知られていない小型録音機ですから彼がその存在に気づくことはありませんでした。

 気づかれなかったのは幸運でした。


 これから、この記録は、私の最強の剣となることでしょう。


 それから私は戦いました。

 当然物理的な戦いではありません。


 私に非があっての婚約破棄ではないのだということを証明するための戦い、それはある意味私の名誉を守るための戦いとも言えるものでした。


 私がやらかしたのではない。

 彼が勝手に言い出した。


 その事実に加え、私は、これまでの彼の暴言たちも世に出しました。


 数ヵ月後、カフスの婚約破棄には正当な理由はなかったということが認められました。

 それはつまり、私には問題がなかったということの証明。

 認められた日はとても嬉しく、すぐには眠れないほどでした。


 やがて、婚約者に対する数々の暴言が世に出たことで、カフスは多くのものを失うこととなりました。


 彼は多数の取引先から取引停止とされたことで仕事がまともにできない状態に追い込まれたようでした。暴言を吐くような者と取引している印象が悪くなる、ということでの取引停止希望がほとんどだったとのことです。


 それによって荒れたカフスはますます酒に溺れていくことになったそうですが、とある街で両家の女性に痴漢のようなことをしたことで逮捕されたと聞きました。


 また、彼の周囲にも影響があったようで。


 カフスの母は近所の女性たちから冷ややかな目を向けられるようになり、カフスの妹二人はそれぞれ婚約者から婚約破棄を告げられることとなってしまったそうです。


 一方、私はというと、今は実家で毎日手芸を楽しんでいます。


 色々あって大変でした。

 でもこれからも明日は訪れます。


 ゆったり生きていこうと思います。



◆終わり◆

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