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婚約破棄されかけて。~愛してなんて言わないから傍にいさせて~
私は彼を愛している。
誰よりも。
「あのさ、悪いけど、あんたとの婚約は破棄ってことで」
「待って!!」
「何? 鬱陶しいんだけど」
「ごめん。でも違うの、聞いてほしいの……これだけ言わせて……」
口から滑り出る言葉。
「愛してなんて言わないから、傍にいさせて!!」
その言葉が、地獄の始まりだった。
◆
私は今も彼の婚約者。
けれども『名称だけの』婚約者、だ。
彼には愛する女性がいる。彼はその人を愛することをやめないし、私に心を向けることはない。きっとこれからもそうなのだろう。
私は今も寝室で彼が来てくれる日を待っている。
でも分かっている。
きっと彼は二度と来ない。
私は永遠に一人。
暗闇の中で貴方を待ち続けている。
いつまでもいつまでも、そのままで。
でもそれで良かったのだ。
私は今も彼の婚約者でいられているのだから。
◆終わり◆