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婚約破棄されましたが、人ならざる者を名乗る者が現れまして……。

「本日をもって婚約は破棄とする!」


 お茶会にて、婚約者である彼ルププトフからそう宣言されてしまった。


「君は忠実でないし、顔立ちは悪くないけれども凹凸があまりなくいまいちそそられない。本来もっと甘えるべきなのにそれもしない。女性として最低の質だよ」


 周囲にいる煌びやかなドレスをまとった女性たちは私に憐れみの目を向けてくる。が、それは心の底からの純粋な憐れみではなく。どちらかというと、憐れみつつも見るのを楽しんでいるようだった。途中からくすくすと感じの悪き笑みをこぼす者もいた。


 ルププトフはどうしてここで婚約破棄を宣言したのか?


 もしかして、私に恥をかかせたかったのだろうか。


 そこまで恨まれるようなことはしていないはずなのだが……。


 謎だ。

 だが私に彼の心が分かるわけもない。


 今はただ、この空間から抜け出したい。


「承知しました」


 だから、婚約破棄を受け入れた。


 ここで憐れまれつつ笑われるのは屈辱。

 このようなところからはさっさと去りたいというのが本音。


「では、これにて。失礼しますね」


 笑顔でそう言って、会場から出ていってやった。



 ◆



 会場から出た瞬間。

 白い光が降り注ぐ。


 やがて目の前に現れたのは、一人の青年だった。


「やぁ! さっきの様子、見ていたよ!」


「ぼくは人ならざる者! あの男に復讐してきてあげるよ!」

「え、いや、結構です」

「どうして?」

「もう関わりたくないです」

「大丈夫! ぼくが勝手に罰を与えてくるだけだよ!」


 そう言うと、彼は会場の中へと入っていってしまった。


 どうなるのだろう。

 不安を抱いていると。


 突如高い悲鳴が響きわたった。


 怖いもの見たさで恐る恐る覗きにいってみると。


 先ほど私が婚約破棄を言い渡された場所、会場内にて、ルププトフは頭から血を流し倒れていた。

 しかもなぜか服を着ていない。


 周囲の女性たちは皆顔を青くしていた。


 何があったのか、と思っていると。


「終わったよ!」

「あ……あの、これは……?」

「ぼくの魔法で罰を与えたんだ」


 思ったより過激な罰だった。


「外に行こ!」

「……そうですね」


 こうして私は彼と外へ出る。


「使ったのはね、服がなくなる魔法と流血する魔法だよ」

「凄いですね……」

「この二つ、そんなに難しい術じゃないんだ」

「そうなんですか」


 彼は笑顔だけれど、少々恐ろしくも感じる。


「ところでさ! これから、友だちにならない?」

「え」

「嫌かな?」


 瞳を潤ませ泣き出しそうな顔をされると「嫌」とは言いづらい。


「いえ、構いませんよ。お世話になった恩もありますし」

「やった! 嬉しいよ!」

「それは良かったです……でも、どうして私と?」

「ぼくの魔法、みんな、嫌がって怖がるんだよね。でもさ、きみはそこまで怖がらなかったよね。とって嬉しかったよ、ありがとう」


 こうして人でない者との関わりが始まった。



◆終わり◆

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