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婚約者と同居し虐められていた令嬢は婚約破棄されたことで解放されました。~これでもう自由なのです!~

 フルリエ・オーマット、赤茶の長い髪が魅力的な彼女は、虐められている。


 始まりは一人の青年との婚約。

 彼女は親の都合で親の知人の子だというオーブスと婚約させられた。


 いざ婚約すると、オーブスは「同居を絶対とする」と主張し始めて。最初は何とか逃れようとしていたフルリエだったが、実の親からも圧をかけられたことで抵抗できなくなり、仕方なく彼の実家へ住みに行くこととなった。


 だが、オーブスには厄介な母親と姉と妹がいた。


「貴女がフルリエ・オーマットさんね。ま、よろしく。これから貴女にはこの家のことを教え込むから、すべてその通りにこなしなさい」


 住みにきたフルリエへの第一声はそれ。

 オーブスの母親が発したものだ。


「貴女はこの家で一番地位の低い女よ。分かっていて? 一切逆らわないこと、いいわね」


 オーブスの姉は鼻が異様に高く長い女性。

 鼻と同じくプライドも高い。

 家へやって来たフルリエを奴隷のように扱った。


「アタシねぇ、アンタみたいな地味女だいきらーい」


 オーブスの妹は目が不自然なほどに大きく、近所では目もとを切り開いているという噂もある。


「思いっきり虐めてあげるからねっ、おもちゃさん!」


 基本的に、虐めの中心は妹であった。

 ただ、姉もフルリエを人としては扱わなかったし、母親はフルリエにあれこれ指導するうえ完璧でなければすぐに殴って怒鳴った。


 フルリエが寝るのは屋敷のすみっこにある狭くほこりだらけの部屋、物置だったところだ。



 ◆



 数ヵ月後。

 フルリエはオーブスに呼び出された。


「フルリエ・オーマット、君は母の期待に応えなかったそうだね」

「え……あの……」

「よって、婚約は破棄とする」

「え」

「母のように働けない能無しはここには不要。もう出ていってくれ」


 この日、フルリエは婚約破棄され、地獄のようなそこから解放された。


 フルリエは実家へは戻らなかった。

 そこへ言ってもまたややこしくなりそうに思ったからだ。


 彼女は心を決め、家から離れた地域へと旅立った。


 それからの彼女は風のようだった。

 心赴くままにいろんなところを巡って。


 そのうちに一人の男性と巡り合い、意気投合する。


 かつて虐められていた時の憂鬱そうなフルリエは消えた。彼女はもう自由、家にも婚約者にも縛られない。だからこそ、笑いたい時に心のままに笑えたのだ。


「ねぇ、私たち、これからも一緒にいませんか?」

「え、急だね」

「嫌です?」

「そんなこと! ないよ! う、うれ、嬉しいよ!」


 年の差は五つ。

 二人は結ばれ、幸せに旅し続けた。



 ◆



 一方オーブス一家はというと悲惨なことになった。


 フルリエを追い出して数ヵ月が経った頃、オーブスは、次の女性と婚約者同士になる。当然同居だ。そして、オーブスの母と姉妹は、やはり婚約者である女性を虐めた。


 だがその女性はフルリエとは違った。


 彼女は証拠を集め、彼女らの行いを世に出したのだ。


 それによってオーブス一家は社会的に死んだ。


 だがそれも当たり前だろう。息子の、兄弟の、婚約者を、複数人で虐めていたのだ。話が世に出てしまえば、そのようなことが許されるはずもない。そのようなことが起きていたと知れば、誰もが、やっていた側に良い感情は抱かない。


 その後、オーブスは誰からも婚約を拒否されるようになり、数年後病気で亡くなった。


 婚約者がいたオーブスの姉は、虐めた件が世に出たことで、婚約を破棄された。


 妹の方はというと、その時はまだ婚約者はいなかったのだが、その後誰にも相手されず、さらに『近寄られたら不幸になる』との噂を広められたことで傷ついて、ある日突然自ら逝った。


 そしてオーブスの母親は、亡き夫ボンの親から「一族の恥だ」と言われてしまい、ボンの妻という肩書きを剥奪されてしまった。



◆終わり◆

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