婚約破棄、ただ愛は今も鮮明に。
愛とは特別なもの。
それは時に恐ろしくも思えるほどの力を生み出す。
しかし突如断ち切られた時には。
残った愛が痛く鮮明に残り続け人を苦しめることもある。
「君とは今日でお別れだよ」
先週、婚約破棄を告げられた。
それはあまりに突然で。
告げられた瞬間は泣かなかったし、そもそもいまいち理解できていなかった。
でも、告げられた日の晩は泣いた。
時間差で迫り来る悲しみと痛み。
胸を締め付けられるような感覚に身体中が軋んだ。
あれから数日が過ぎ、今はもう、一日中号泣しているような状態ではなくなったけれど。それでも胸の痛みはまだ残っている。
そして、時が経てば経つほど、彼への愛が想いが鮮明に浮かび上がってくる。
彼はこれと同じものを抱いてはいなかった。
これは私だけのもので。
彼も同じように感じているかもしれない、なんていうのは、ただの幻想でしかなくて。
でも、この愛は消えない。
彼にはきっともう会わないだろう。
私も会わなくていいと思っている。
だが。
だからといってこの愛が塵となるかといえばそうではない。
愛とはそう簡単には消え去ってくれないものだ。
かつて自分に幸せを与えてくれていたそれは、これから、棘をもってこの身を突き刺すのだろう。
けれども後悔はない。
この想いが身を傷つけるとしても、それでも、この想いをいつまでも大事に抱えていたい。
婚約破棄された。
ただ、愛は今も鮮明に。
◆終わり◆