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婚約破棄、悲しい海の記憶。

 あれはいつのことだったかしら。

 ずっと前のこと。

 それこそ、あれがいつだったかさえ忘れてしまうような、遥か過去のことだけれど。


 私は貴方と並んで海を見に行ったの。


 私が生まれ育った街は海岸から離れたあたりに位置していたわ。だから、話で聞くことはあっても、本物を目にしたことはなかった。そのことを話すと貴方は「見に行こうよ」と言ってくれて。確か、そういう経緯があって、二人海を見に行ったのよね。


 どこまでも果てしなく続く、空ではない、もう一つの青。

 私は心奪われたわ。

 そして、貴方と共にこれを見られて良かったと、心から思えた。


 でももうそれは過去。


 そう、先日彼から婚約破棄を告げられた。


 私たちの婚約期間は一般的なそれに比べると長かったけれど。

 でも上手くやっていけると思ってた。


 勘違いだったのね。


 いつの間にか、彼が見つめているのは私ではなくなっていた……。


 今、一人、海岸へ来ているわ。


 ここはあの頃と何も変わっていない。

 永遠を描くような青い海、波の音、汐の香り。

 あの日と変わらず、すべてが在る。


 なのに貴方はいないの。


 どうして?

 どこかで何かを間違えた?


 私にはそれすら分からなくて……。


 あぁ、なにもかもが悲しい。


 あれはもう悲しい記憶ね。


 でも海を眺めるのは好き。

 なぜなら、その変わらない風景が、幸せだった貴方との時間が確かにあったことを証明してくれるから。



◆終わり◆

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