147/1194
婚約破棄、そして春がやって来る。
「おめんとはもう生きていけねんだわ、婚約は破棄すんだわ。であな。永遠にばいばい」
彼がそう口にした時、私と彼の婚約者同士という関係に幕が下りた。
一緒に田畑を耕すのは楽しかった。
でもそれも過去のこと。
過ぎ去った日々、ただの記憶でしかない。
今は冬。
そして私の心の中の冬みたいだ。
季節は巡る。
必ずいつか冬は去り、新しい春が訪れる。
心もそうだろうか?
そうであってほしい。
そうでなくては悲しすぎる。
この冷えきった心に訪れる春を待つ。
◆
現実の季節が春になろうとしている頃、私の心も徐々に回復してきた。
実際の季節と心の季節。
まるで重なっているかのようだ。
彼との楽しかった時間は過去に消えてしまったが、それはそれと思えるようになってきた。
過去は記憶として残る。
たとえそれが今でなくとも。
でも縛られてはならない。
過去を思い返し楽しむことはあっても、それに振り回されるべきではないのだ。
春。
心にも陽が射し込んで。
そろそろ進み始めようかな、と、芽吹くように前を向く。
春がやって来る。
◆終わり◆