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すみませんが、私は貴方とは生きません。~ぶりっこちゃんと楽しくね~

 私にはアダンという婚者がいる。


 彼は私より一つ年上、彼が私に惚れ込んだことによってこの婚約は始まった。


 婚約する前、彼に追いかけ回されていた時期は、非常に心理的負担が大きかった。朝から待ち伏せされたり、夜中まで家の前に立たれたり、花束を投げ込まれたり、とにかく奇行が凄くて。近所の人に迷惑をかけそうになることもあったくらいだ。


 だがそれらは婚約すると収まった。

 平和になったかに思われた。


 のも、束の間。


 アダンに寄り付くぶりっこな女性が現れた。


 彼女の名はリリンというらしい。

 背は低く、胸は大きく、語尾を伸ばすようなだらしない喋り方をする。


 そんなリリンに惹かれたアダン。私に黙って二人きりで出掛けるようになっていった。ちなみに私には「仕事で会わなくてはならない人がいる」と伝えていた。だがそれが嘘であることは私はよく知っているのだ。なんなら証拠だって持っている、怪しく思ってから調査していたから。


 彼のことは好きではないが、だからといって婚約している身で他の女と遊び回られるのも嬉しくはない。


 だからそろそろこの関係は終わらせようと思う。



 ◆



 その日、私は、アダンを読んだ。


「そのへんどこにでも掛けて」

「ありがとう」


 彼は私が考えていることを察してはいないようだ。

 一切動揺せず自然な表情を保っている。


「アダン、リリンさんって女性といつも遊んでいたそうね」


 私は躊躇うことなく切り出す。


 こちらに負けはない。

 二人が一緒にいる証拠はたくさん持っている。


「え? 何の話?」

「仕事で、っていう話は嘘だったのね」

「何それ、人違いだよ。だって僕は仕事の人と会ってるもん。もちろん男の人だよ」


 さて、証拠を使おう。


「じゃあこの写真は?」


 アダンがリリンと共に歩いている写真を数枚出す。

 中にはいかがわしい施設へ入ろうとしているような写真もある。


 それからしばらく証拠を出しながら問い詰めると、アダンはついに認めた。


 だが反省はしていないようだ。


「ごめん。でも、一番大事なのは君だよ。リリンはあくまで欲を満たす仲でしかなくて、妻にしようなんて思ってはいないよ。中の上のリリンより君の顔の子どもが欲しいし」


 そんなことを堂々と言ってのけられる神経が凄いと思う。


「ま、いいわ。婚約は破棄、いいわね」

「え!? どうして!?」

「リリンさんと楽しくね」

「待って待って待って、それは困る、親に怒られる」


 今さら慌ててももう遅い。


「大丈夫よ、親御さんには私から伝えておくわ。貴方が何をしたのか、じっくりと、ね。じゃ」


 こうして私は彼の前から去った。


 私は取れるものは取るつもりだ。あんなことをした人に情けをかける気はない。アダンも、アダンにちょっかいを出したリリンも、精々罪を償えと思う。だから私は躊躇しない。償いの一つとしてお金だってしっかり貰う、可能な範囲で。


 その後、手続きを開始した。



 ◆



 半年後、私は、二人から支払ってもらったお金で裕福になっていた。


 心の底から愛している人に捨てられた、というわけではないから、このくらいで許してやってもいいかなとは思う。


 今後はもうあまり関わらないようにしたい。

 それが本心だ。


 私は過去に囚われず新しい人生を歩んでいきたいのだ。


 ちなみに、リリンの家は、慰謝料の支払いによって持っていた財産の半分以上を失うこととなったそうだ。というのも、彼女はほとんどお金を持っておらず、親のお金まで慰謝料の支払いに使うこととなったのだそうで。それによって、もとよりあまり裕福でなかったところがさらに厳しい状況になったらしい。また、家にお金がなくなったことで、リリンの父親が不倫相手を妊娠させたがお金で口封じしていたことも明らかになってしまい。リリンの両親も揉めることとなり、家庭はめちゃくちゃになってしまったとのことである。


 一方アダンはというと、昔の恋人が雇った殺し屋にある日突然殺されたらしい。



 ◆



 あれから五年、私は、国防軍兵士の男性と結婚した。そして、今は待望の第一子を腹に宿している。向こうの親もこちらも親も孫の誕生を楽しみにしていて、もうじき出産するであろう私はとても大切に扱われている。



◆終わり◆

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