143/1194
婚約破棄、それでもまた陽はのぼる。
婚約破棄。
突然に告げられたそれは、私を、寒く冷たい湖に沈めた。
どこまで深いのだろうと考えてしまうような湖。そこは暗く、遠ざかる上は自然の光で微かに見えても、下は暗闇で何も見えない。いつになれば底へたどり着くのか、それさえ察することはできない。音はなく、光も少ない、まるで宇宙に放り出されたかのよう。
浮上しよう。
そう努力するたびに身体は深くへゆく。
私はどこへ向かうのだろう……。
ただ問うこともできない。
◆
やがて月日が流れ、私の心は湖から上がることができた。
私はもう涙しない。
心折られもしない。
心に陽が射し込む。
時が傷を癒やした。
「庭掃除でもしようかな」
それは、一ヶ月ぶりの外出だった。
◆終わり◆