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婚約破棄されたので離れた地へ行って生きます。さようなら、生まれ育った町。

「わりーな、呼び出したりして」


 婚約者オットトに呼び出されたので何かと思って駆けつけた。


「いいのよ」

「実はちょっと話があってさ」

「いいわよ、何?」

「実は、俺……」


 彼は少し躊躇うような顔をしたけれど、数秒の沈黙の後、口を開いた。


「婚約、破棄することにしたんだ」


 言葉を失う。

 何も出てこない。


 婚約、破棄……?


 何も言えず、ただ彼の顔を眺めることしかできない。心臓は跳ね、瞳と唇が震える。血の気が引いていくような感覚がある。


 想定外だった。


「びっくりさせてごめんな、でももう決めたんだ。じゃ、そういうことだから」

「ま……」

「今までありがとうな!」


 彼は爽やかにそう言うと、逃げるように去っていった。


 私は一人その場に残される。

 ひとりぼっちだ。


 とても寂しい。


 でももう婚約は破棄された、引き留める資格なんてない。


 こうなったらもう遠いところへ行ってしまおう。

 知り合いが誰もいないようなところへ。

 苦労はあるだろうけれど、ここで婚約破棄された女として暮らし続けるよりかはましだろう。


 数日後、私は旅立った。



 ◆



 それから一週間ほどが経過し、私は、のほぼん村という村にたどり着く。


 その村はここ数十年人口が減少傾向にあるらしく、新たに住みたいという人を募集していた。ので、私はそこに住むことを希望した。すると温かく受け入れてもらうことができた。


「これかーらよろーしくーおねがいーしまーす」

「こちらこそ」



 ◆



 のほぼん村の村人になってから五年。


 村長の息子に気に入られた私は彼と結ばれることとなった。


 彼は次代村長。

 私はその妻ということになる。


 仕事が色々あって忙しくなるだろうとは思うが、頑張りたいと思う。


 だってここは私を救ってくれた村。

 いずれ恩返しをしなくては。


 なんだかんだで今はとても良い暮らしをできている。よそ者であった私を多くの人が受け入れてくれていることにも、私が村長の息子と結婚することを認めてもらえたことも、とても嬉しく喜ばしいことだ。この村の人たちには感謝しかない。


 だからこれからも村のため働こう。


 ちなみにオットトはというと、あの後数台の馬車が絡む事故に巻き込まれ亡くなってしまったそうだ。


 恋人と婚約する日が明日に迫った頃の事故死だったらしい。



◆終わり◆

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