僕は容姿がいまいちだからって婚約破棄されたんだ。でもついに出会えたよ、僕を受け入れてくれる素晴らしい人に。
「あなたみたいな人と生きるなんて、やっぱり耐えられない! もう我慢の限界よ! 婚約、破棄するわ!」
西洋人形みたいな麗しい婚約者マリーに婚約破棄を告げられてしまった。
僕、エルエルは、容姿がいまいちなんだ。ちょっぴり蛙みたいだし、鼻も低くて、パッとしない。そんなだからそれまで恋人はおらず、マリーとは親戚の紹介で知り合った。
でも彼女のことは好きだったよ。
大切にしようって思ったし、出会いに感謝もしていたんだ。
だけど、こうなってしまった。
男は容姿じゃない、そう言ってくれる人もいるけれど。
やっぱり一応容姿は重要なんだよね。
容姿がいまいちだと女性受けもいまいち。
受け入れてはいるけれど。
でもやっぱり少し悲しいよね。
「いつまでそこにいるつもり!? さっさと出ていって!!」
こうして僕はマリーに捨てられた。
仕方ないかな。
この顔面だし。
◆
数ヵ月後、僕は、とある晩餐会にて一人の女性と知り合う。
「中へは行かれないのですか?」
彼女は美しいドレスをまとっていた。スカイブルーで真珠がついたドレス。なのに会場内に行くことはせず、ベランダで一人夜空を見上げている。
「……行かないわ、ああいうのは好きじゃないの」
僕が発した問いに、彼女はそう答えた。
「あ、いや、すみませんいきなり」
「……どうして謝るの?」
不思議そうな顔をする女性。
「えっ」
おろおろしてしまう僕を見て、彼女はふっと笑う。
「余裕ないのね」
その少し意地悪な笑みに、僕の心は奪われてしまった。
◆
結論から言うと、僕はあの晩餐会で出会った女性と結ばれた。
あの時、人のいないベランダで少し二人で喋ったのだが、彼女は僕の容姿を馬鹿にはしなかった。いや、馬鹿にするどころか、「私はべつに嫌いじゃない」とまで言ってくれた。気を遣ってくれたのだろうと思っていたのだが、後日手紙が届いて。一度会って話がしたいとのこと。で、それから何度か二人で会い、結婚することになった。
『貴方は自信を持っていればいいのよ』
その言葉が、惚れさせた。
で、今はというと、彼女と二人穏やかに暮らしている。
「今日何してた?」
「本を読んでいたわ」
「本?」
「えぇ、料理のね」
僕は仕事が忙しく昼間は家にはいられないのだが、帰宅すると彼女はいつも温かく迎えてくれる。
もっとも、べたべたはしないのだが。
「料理……」
「私、あまり詳しくないのよ、そういうことには。だから勉強しようと思って」
「食べたい!」
「ま、あまり期待しないで」
今はとても幸せだよ。
そういえば、マリーのその後のことを最近知ったのだけれど。
彼女は美男子と結婚したそうだよ。
でも浮気されてしまったらしいね。
話によれば、彼女の夫は異性との交流が異常に好きな性質だそうで、毎晩別の女性と過ごしていて家にはあまり帰らないんだって。
誰が幸せを掴むか。
案外分からないものだね。
◆終わり◆